可能性がある限り諦めない。阪神が4番ジェリー・サンズ外野手(32)のバットでDeNAとのシーソーゲームを制した。一時逆転された直後の7回に再逆転となる2ラン。大山に並ぶチーム最多の17号でそのまま逃げ切り、連敗を3で止めた。負ければ自力V消滅の可能性があったが、引き分けた首位巨人とのゲーム差を9・5に縮めた。

   ◇   ◇   ◇

サンズの一撃が、危機を救った。直前に逆転を許し、6-7の7回1死一塁。4番手国吉の失投を見逃さなかった。初球、真ん中に入ったカットボールを振り抜いた。完璧に捉えた打球は、左中間席に突き刺さる17号2ラン。「糸原が(四球で)何とか出てくれたので、それに続こうという気持ちで打席に入った。甘く入ってきたボールをしっかり仕留めることができたし、逆転することができて良かったね」。4番が一振りで逆転し、試合を決めた。

取っては取られる乱打戦だった。3回に2点を先制も、直後に追いつかれた。4回に3点を勝ち越しても、6回に逆転を許した。「大変厳しい状況だったので、どうにか打ちたい場面だった。2ランホームランという形で逆転できて本当に良かったよ」。10ゲーム差で追う首位巨人が勝ち、阪神が負ければ自力Vの可能性が消えていた。その巨人は終盤に追いつかれ、引き分け。希望をつなぐ1発となった。

開幕は2軍で迎えた新助っ人も、今では頼れる存在として4番に座る。活躍に比例して、ファンの人気も急上昇。甲子園近くのグッズショップでは、サンズのネームタオルだけ売り切れることもしばしば。代名詞「ハッピーハンズ」がデザインされたタオルも、入荷即売り切れが続く大盛況ぶりだ。ヒーローインタビューでも流ちょうな日本語で「タイガースファン、オオキニ!」とあいさつし、虎党の心をつかんでいる。

矢野監督は「何とかランナーを置いて、ジェリーに回すというのが今、野手としてやること」と、厚い信頼を寄せた。3回にも犠飛を放つなど2安打3打点の活躍で、チーム打撃主要部門で3冠となった。9月は9戦5発でリーグ月間トップ。本塁打は大山と並んでリーグ2位となり、1位の巨人岡本に2本差。気づけば51打点も1位の岡本まで5点差と、昨季韓国打点王の実力はだてではない。

11日からは本拠地甲子園に戻り、広島3連戦。「調子はすごくいいよ。この調子を続けられるように」。頼れるサンズのバットで一戦必勝を重ねるのみ。意地でも巨人に、食らいついていく。【奥田隼人】

▼阪神の自力優勝消滅は最短で12日となった。条件は、11日から阪神が広島戦●●のとき巨人がヤクルト戦○○または○△、阪神●△のときは巨人○○など。