巨人戦の前に負けられん! 阪神が執念全開の総力戦で広島とのシーソーゲームを制した。矢野燿大監督(51)は前日V弾で本塁打王を争う5番大山に今季初犠打を命じ、藤浪を4回途中で見切って勝ちパターンを続々つぎ込む攻めダルマ采配。6-6同点の8回、途中出場の陽川が決勝3号を放って競り勝った。4連勝で昨年6月14日以来、457日ぶりの貯金4。9・5差からの奇跡へ、明日15日からの首位巨人3連戦(東京ドーム)にはずみをつけた。

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「必死のパッチ」で勝利をつかみ取った。試合後、会見場に現れた矢野監督は興奮が冷めなかった。「みんなその場所、その場所で必死に粘って、みんなでつないでくれました」。全員野球でシーソーゲームを逆転。ケリをつけたのは、6-6同点の8回2死。途中出場させた陽川の勝ち越しアーチだった。週明けに戦う首位巨人3連戦を念頭に貫いた攻めの采配が、今季3度目の4連勝と1年ぶりの貯金4をたぐり寄せた。

矢野監督 やっぱり勝ってジャイアンツにいきたい。いい流れでいきたいというのは気持ちの中であった。

試合前から、この一戦にかける覚悟がにじみ出た。捕手の梅野を2番で3試合連続起用。調子を落とし気味の糸井は日本ハム時代の10年4月以来、10年ぶりに7番に置いた。矢野監督は「違和感はあるだろうけど、目の前の試合とか打席に精いっぱいいってくれている」とうなずき、糸井も2安打1打点で応えた。

ゲーム中も手綱を緩めない。まさかの光景にスタンドがどよめいたのは3回だ。藤浪が失った3点ビハインドを追いつき、なお無死一、二塁。前日決勝3ランを放つなど本塁打王も争う5番の大山に、送りバントを命じた。大山も投前にしっかり転がす今季初犠打で二、三塁に好機を拡大。ボーアと糸井が連続適時打で応え、2点を勝ち越した。

継投も惜しみなくつぎ込んだ。2点リードに転じた4回、藤浪が連打と四球で1死満塁のピンチを招くとスパッと馬場に交代。再び同点の5回からは勝ちパターンの岩貞を送り込んだ。1、2戦目は西勇、秋山と先発が力投。矢野監督は「今日は全員つぎ込んででも勝つというのは自分でも思っていた」と、腹をくくっていた。岩貞に続いて、岩崎とスアレスもイニングまたぎ。文字通りの総力戦で、広島を1点上回った。

過酷な13連戦は7勝4敗1分け(雨天中止1)の貯金3で乗り切り、いよいよ明日15日から首位巨人3連戦に挑む。巨人はこの日も勝って9・5差は変わらない。阪神は今季、東京ドーム6戦全敗で、初戦は10連勝中の菅野が予想される。その試合で負ければ、巨人にマジックが点灯して、阪神の自力Vが消滅する崖っぷち。だが矢野監督はきっぱり言った。「形は作れたんでね。何とかジャイアンツにタイガースらしい戦いで勝ってくるように、精いっぱい戦ってきます」。奇跡へ人事を尽くし、最後の大勝負に挑む。【桝井聡】