日本ハム栗山英樹監督(59)は自然な流れで、言った。17日ソフトバンク戦(札幌ドーム)の試合後。

「ケンタが、あそこまで頑張っていたので、どうしても勝たせてあげたかった」

ケンタとは、先発した上原健太投手(26)のことを指す。試合前までは、基本的には名字の「上原」と呼ぶことが多かったが、9回途中まで力投した姿を見て、名前で呼び、成長をたたえた。白星はつかめなかったが、今後も先発ローテを十分託せる内容だった。15年ドラフト1位左腕の覚醒を心の底から待っていた指揮官の喜びが「ケンタ」に詰まっていると感じた。

栗山監督は選手のことを、ニックネームで呼ぶことが多い。

「スギらしくなってきた」

この例文の場合、「スギ」とは杉浦のことを指す。杉谷ではない。杉谷は名前から「ケンシ」と呼ぶ。

もちろん、名字で呼ばれる選手もいる。秋吉亮は「アキヨシ」だ。「リョウ」でもいいが、その呼び名は石川亮に使用している。だからといって、各選手への思いが変わることはない。「選手を預かる立場として、人として、成長することを願うだけだよ」。積極的にコミュニケーションを図って、日々の成長の一助になるよう努める。成長を感じられれば、素直にうれしいはずで、よりフランクな呼び方になることもある、ということだと思う。

ちなみに、石川亮と同姓の石川直也は「チョク」。選手間での愛称を、そのまま採用していると思われる。「ナオヤ」や「ナオ」でもいいが、上沢直之を「ナオ」と呼ぶため、混同しないよう配慮しているのかもしれない。日本ハムファンなら、もうおなじみだろうが他にも「タイシ」「タク」「ハルキ」「ショウ」「コンちゃん」「ナベ」「コウタロウ」「ビヤ」「ユウシ」などがある。分からない方は「ケンタ」が先発した17日ソフトバンク戦のスタメンを参照してほしい。

監督と選手の距離感は、それぞれ、いろんな考え方はあると思う。受け取り方も人もそれぞれだが、個人的には栗山監督の選手に対する愛情を感じる部分である。【木下大輔】