広島鈴木誠也外野手(26)が逆転本塁打王を狙い、20日からの阪神3連戦(甲子園)に臨む。11月はすでに今年の自身月間別本塁打数で最多タイとなる5本塁打を放ち、タイトル争いに加わった。昨年の首位打者に続き、本塁打王獲得となれば、広島では(打点王も3度獲得の)山本浩二氏以来2人目となる。現在26本塁打でキングの大山が待つ敵地甲子園で、1本でも多くアーチを描きたい。

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V逸が目前に迫っても、個々の戦いは最後まで続く。主砲鈴木誠が本塁打王を射程圏に入れた。直近3試合で3発と量産し、リーグトップの阪神大山に2本差に迫った。いつもは「僕はホームランバッターじゃない」と謙遜する主砲が「今のチーム状況でも球場に見に来てくれている人たちのために、少しでも喜んでもらえるように頑張ります」と珍しく意欲を示す。20日からはキングをいく大山がいる阪神3連戦だ。

変幻自在の打撃で確実性だけでなく、長打力にも磨きをかけている。15日巨人戦の1打席目に投球動作と同時にグリップをヒッチさせるフォームを試した。前日から大胆なフォーム変更ながら、いきなり中前打をマーク。続く打席では内角球にスムーズにバットを出し、左翼線への二塁打とした。

鈴木誠がシーズン中に打撃フォームを変えることは珍しいことではない。昨季も巨人坂本に似たフォームにしたり、両足を近づけた構えから始動したり、ノーステップ打法にしたりと、自身のコンディションや調子、相手投手との間合いなどで臨機応変に対応する。本人も「シーズン通していろいろ試行錯誤するのは当たり前のことなので、自分ではそんなに変えているつもりはありません」と言い切る。練習からさまざまな打撃フォームを試して常に引き出しを増やしているだけに、打席で実践することにも迷いがない。

鈴木誠はシーズン中の変化は当たり前であり、変化し続けるものだと感じている。ヒッチする打法で複数安打した翌16日の中日戦は1打席目に同じフォームで一邪飛に倒れた。中日先発ロドリゲスにタイミングが合わないと感じると、2打席目には打撃フォームを戻してバックスクリーンへ1発。5打席目にも戻したフォームで本塁打を放った。

昨年の首位打者に続き、今年本塁打王を獲得すれば、広島ではミスター赤ヘルと呼ばれた山本浩二氏(打点王も3度獲得)以来2人目となる。確実性と長打力を兼ね備えた打者の証しともいえる。若き主砲が苦しんだシーズンの最後に、大きな目標に挑む。【前原淳】