GAP(ギャップ)が魅力だった。西武高橋朋己投手(31)は、174センチながら“チャプマンよりも速く感じる”快速球を投げ込んだ。元来から天賦の才があったわけではない。高校時代の最速は128キロ。大学入学直後、突如143キロに跳ね上がる。「高3の冬場に、たきぎを作るためにまき割りばかりしていた。お湯を沸かして後輩たちの夜食用の、うどんを作るためだったんですけど」。偶然の産物。漫画のような逸話で一気に道が開けた。

2300万円増で年俸5800万円(推定)に達した15年の契約更改。使い道に「ユニクロを買いたい。今も背番号(43番)ぐらいアイテムを持っているので」と庶民的な爆買い宣言。実際に地元のユニクロ店から大量に贈呈を受け「言ってみるもんですね」と、てへっと笑い「生涯ライオンズ、生涯ユニクロです」と人懐っこかった。

入団8年、支配下登録は6年だった。輝いた年もあるが超一流の実績ではない。永遠に忘れられないオーラを発出したわけではない。でも何となくいつまでも忘れることがない。それが高橋朋己だと思う。ユニクロのフリースを時折、思い出すかのような。【15年西武担当=広重竜太郎】