ヤクルト五十嵐亮太投手(41)が、笑顔で23年間の現役生活に別れを告げた。

試合後の引退セレモニーでも涙は見せず、ファンや家族、そしてチームメートへ感謝の気持ちを伝えた。「僕の思い出のつまった神宮球場で、ここに立てていることを幸せに思い、感謝の気持ちでいっぱいです。ファンのみなさん、これまで、温かい声援をありがとうございました。みなさんの声援に背中を押され、勇気をもらい、助けられ、ここまでやってくることができました。ヤクルトを離れて10年がたち、去年戻ってきたときのみなさんの温かい声援、生涯忘れません」。

高津監督の元、スタートした今季は中盤以降は苦しい戦いが続き、チームは最下位に沈む。そんな状況も、ファンとチームが一緒になって乗り越えられると、強く訴えた。

「今、ヤクルトは苦しい戦いが続いています。しかし、どんな時も下を向かずに戦ってきた選手、そして僕たちを信じて続けてくれた高津監督、コーチの姿を、僕は知っています。いま一度、チーム、そして、ファンのみなさんが、ともに戦い、乗り越えていけると信じています。最後に僕からお願いがあります。今年一番の拍手を、選手、そしてチームに送ってください」。

満員のファンが席を立ち、大きな大きな拍手が、グラウンドに降り注がれた。ファン1人1人の、エールが込められた拍手。

「僕は、これからもスワローズのファンのみなさんと、ともに戦い、喜びを分かち合える景色をずっと見ていたい。これからも、東京ヤクルトスワローズとともに、戦っていってくれるでしょうか。ヤクルトを愛していってくれるでしょうか。これからも、ヤクルトをよろしくお願いします。23年間、本当にありがとうございました」

選手に愛され、ファンに愛された五十嵐。その愛を返すように、五十嵐は場内1周で外野フェンスによじ登り、ファンの近くで手を振った。過去には、古田氏や宮本氏も登った場所。「(やると)決めていました。やってみたいなと。あそこから景色を、2人が見ているけど、僕も見たいなと思って。この先も誰かにやってほしいなと思います。年齢がいくと、あそこに登るのしんどいんですよ。でも、もたついているのはやっぱり恥ずかしいから、こん身の力を使って登りました」と笑顔で振り返った。

スタンドには、「ありがとう!」と大声で叫んだ。投げキスもした。最後の記念球は、一塁側のファンへ投げ入れた。「あんなにたくさんのファンに来ていただいて、それで最後の1球だったんですけど、その気持ちを伝えたいなという思いで投げました」と明かした。

“ヤクルトのキムタク”は爽やかな笑顔で、グラウンドを後にした。