広島の2年目田中法彦投手(20)がプロ初登板を1回無失点で飾った。ヤクルト戦の6回にマウンドに上がり、3者凡退。2軍では抑えを務め、今季はウエスタン・リーグで13試合連続無失点など防御率1・73を誇り、リーグ最多の12セーブを挙げる。本拠地で成長ぶりを示した右腕が、来季に向けてアピールを重ねる。試合は7回に追い付き、引き分けに持ち込んだ。

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待ちに待ったプロ初登板で持ち味を存分に発揮した。16日に1軍初昇格から2週間。背番号「57」。田中法がマツダスタジアムのマウンドに上がった。6回。先頭広岡を2球続けた真っすぐで左飛に打ち取ると、古賀も全球直球勝負だ。打者有利な3-1から144キロで詰まらせて再び左飛に仕留めた。代打長岡には変化球を交えながら最後は144キロで遊ゴロに打ち取った。肌寒い初のナイターで、若さを前面に押し出した投球。延長10回の中、唯一3者凡退のイニングをつくり、太い眉がトレードマークの右腕が頼もしく見えた。

「ブルペンの方が緊張したんですけど、ベンチからグラウンドに出たときには、気持ち的には大丈夫でした。変化球を低めに投げ切れた。やってきたことが出せたのかなと思います」

デビュー戦の最速は145キロだった。菰野高時代は3年夏に152キロを計測したこともある速球派。プロでは球速ではなく、球質を磨いたことで、140キロ台でも2軍打者を抑え込んできた。1年目はカーブとスライダー、チェンジアップで組み立てていたが、今年は高校時代に持ち球にしたスプリットを解禁した。この日1軍で対戦した長岡にも2球見せた縦の変化が、凡打を呼び込んだ。

同期の同学年は野手ばかり。小園や林、羽月と、すでに1軍の舞台を経験していた。「刺激というか、僕もそうならないといけないと思った」。昨秋はフォームに思い悩む時期もあったが、同学年唯一の投手として1人、コツコツと取り組んできた。

1年目は2軍から外れ、基礎体力強化やフォーム固めに重きを置く“3軍”で多くの時間を過ごした。そして高卒2年目に1軍デビューするのは、広島伝統の育成システムでもある。中崎や遠藤も同様だった。1年目の「基礎」から2年目の「実践」。そして3年目の「応用」で飛躍-。

早期1軍昇格から1軍定着の道を歩んだ先輩たちと同じ道のりを、田中法も目指す。【前原淳】

▽広島佐々岡監督 しっかり3人で抑えてくれた。緊張感があったと思うけど、いいスタートを切れた。経験を積んでどんどん成長してほしい。

▽広島横山投手コーチ 投げるチャンスがなかったけど、登板出来たことは大きい。物おじしない性格。いつ行くか分からない中、緊張もあった中で来季につながる。

◆田中法彦(たなか・のりひこ)2000年(平12)10月19日、三重県生まれ。菰野から18年ドラフト5位で広島入団。1年目はウエスタン・リーグで4試合登板にとどまるも、1軍秋季キャンプを経験した。2年目の今季は2軍の守護神を務め、25試合で1勝1敗、防御率1・73。ウエスタン・リーグトップの12セーブを記録する。今季推定年俸450万円。173センチ、83キロ。右投げ右打ち。