苦難の末にロッテの今季2位が確定し、4年ぶり7度目のCS出場が決まった。

3位西武との直接対決。四球、小技、積極走塁で1点ずつ積み重ねた。先発要員の岩下大輝投手(24)もリリーフ起用する盤石の継投で、ロッテらしく勝った。14日から、福岡で王者ソフトバンクとのCSが開幕。シーズン3位から日本一へ上り詰めた2010年「下克上」の再現を狙う。

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あかね色の秋空に、多くの腕が突き上げられた。急失速で失いかけたCS出場権を、死球を受けた爪が青いままの捕手田村が大事に捕る。CSが決まった。井口監督は「粘ってしっかりつなぐのがマリーンズの野球。本来の野球が取り戻せたかな」と、選手たちを頼もしそうに見つめた。

4回、伏兵藤岡がカーブを引っ張って決勝弾になった。スタンドは歓喜と、少しばかりの驚き。打った本人でさえ「最高の結果です」と興奮した。ただ、空中戦は今年のロッテの本分ではない。象徴的なシーンが6回にあった。6番井上が安打で出塁も、藤岡が犠打失敗。それでも1死後、田村も送りバントをした。

2死でも得点圏へ-。塁上の井上は「逆にそういうサインが出たことで、この試合の大切さが伝わってきた」と話す。今季60勝中32勝が2点差以内。チーム打率は12球団ワーストの2割3分4厘だ。益田らリリーフ陣は盤石なだけに、現実を自覚すると「四球=安打」「得点圏へ進める」のコンセプトが大事になる。

もう1つが「次の塁を積極的に」。6回の送りバントの後、荻野の内野安打で相手の連係が乱れた。二塁走者井上がホームに突進。「判断はいいけど、足遅くてトロいってよく言われます」。この好走塁が相手失策を誘うと、一塁走者の安田も生還。長所を生かして3点差とし、試合は一気に安全圏に入った。

強力打線でないことは皆が知るところ。2ボールで拍手が増える。特にこの日、井上は「スタンドのイケイケ感が半端なかったです」と感じた。「僕たちは意外と普通だったのに。助けられました」。声は出せなくても、ZOZOマリンが後押しの熱気に満ちた。

8勝17敗と沈んだ10月。「自分たち(のプレーぶり)を疑うような反省の仕方をしていた」という井上の言葉が深い。和製打線としてようやく吹っ切れ、ロッテらしく戦える流れが今はある。去年は最終戦でCSが消えた。「選手たちも苦しかったと思いますけど、乗り越えてくれたのは大きい。CS、楽しみです」と井口監督。下克上の気配を漂わせ、いざ西の空へ。【金子真仁】

◆10年ロッテの下克上 3連勝でシーズンを終え、最終戦で3位に滑り込み。CS第1Sは西武に2連勝。ソフトバンクとのファイナルSは1勝3敗と後がない状況から3連勝し、史上初めて3位から日本シリーズに出場。中日とのシリーズでは、7試合中3試合が延長戦となる接戦を4勝2敗1分けで制し、日本一をつかんだ。