GM兼任監督が誕生した。楽天は12日、石井一久ゼネラルマネジャー(GM=47)が来季の監督を兼任すると発表した。新たに複数年契約を結び直した。就任1年目の三木肇監督(43)は昨季務めた2軍監督に配置転換される。今季は借金2で4位。クライマックスシリーズ(CS)進出を逃し、2年ぶりのBクラスに終わった。シーズン中から三木監督の続投を基本線に進んでいたが、球団幹部を含め総合的な判断が下され、石井GMにタクトが託された。

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柔和な表情はない。色とりどりの花々を前に、石井GM兼任監督が強い口調で発した。「東北の皆さまに愛されながら、強いチームにすることが僕の使命。この仕事は非難いっぱい、称賛少しという仕事。何を言われようがぶれずにまい進したい」。日米通算182勝をつかんだ大柄な体に覚悟、勇気を握りしめ、決意を示した。

重責を担う。葛藤は計り知れない。7日に4位で全日程を終了。「自分自身に反省している」と結果を受け止めた。ほどなく10日に球団から打診を受け、11日に受諾。「僕でいいのかなと。中途半端になるんじゃないか、責務を果たせるのかと」と考えを巡らせたが、7年前の光景が背中をひと押しした。

石井GM兼監督 僕は東北に住んでいたわけでもないですし、縁もゆかりもない中で、13年に日本一になったシーンを僕自身見ていた。野球人生で忘れられないひとコマ。もう1度実現したい。東北の皆さんに2、3度と見せてあげたいという気持ちでやっている。

思いをかなえるため“石井流”のチーム作りを描く。今季はチーム打率、得点ともにリーグトップも逆転負けが12球団ワーストの32試合、1点差負けは15試合。「ポテンシャルのあるチーム。ただ勝負弱い。どんな野球にも対応できる、骨太なチームにしたい」。競り勝てるチームへ、ブルペンをはじめ、投手陣整備へ積極的に着手する考えだ。

GM在任中はさまざまな声が目に、耳に入った。「過去のちょっとしたコメントを使って記事を出された。何か反応がいいみたいで。監督になれば誤解のない自分の言葉をしゃべられる。僕は褒めてほしいとも思っていない。このチームを強くしたい。魅力あるチームにしたい」。自らの手で口で、常勝軍団を築く。【桑原幹久】

◆石井一久(いしい・かずひさ)1973年(昭48)9月9日、千葉県生まれ。東京学館浦安から91年ドラフト1位でヤクルト入団。02年オフにポスティングでドジャース入団。メッツを経て、06年ヤクルト復帰。07年オフにFAで西武に移籍し、13年引退。日本で143勝103敗1セーブ、日米通算524試合で182勝137敗1セーブ。18年8月から楽天GM。

楽天三木2軍監督 監督として自分の目指していた野球がなかなかできなかったことを心残りに思うと同時に、ファンの皆様の期待にお応えできず、大変申し訳なく思っております。来シーズンは2軍監督として、将来のイーグルスを背負っていく若い選手やコーチたちの育成など、さまざまなテーマに力を注いでいきたいと思います。チームのために頑張りたいと思います。

◆GM(ゼネラルマネジャー) 監督、コーチ、選手らの人事権を持ち、選手獲得やトレードなどチームづくりの最高責任者。日本では94年にロッテが、広岡達朗氏をGMの肩書として初めて起用。GM兼任監督は、過去にソフトバンク王貞治球団会長も経験。オリックス中村勝広氏は03~05年にGMを務めた後、06年に監督となった。15年9月、楽天の取締役副会長に就任した星野仙一氏のように、GMを名乗らないでも実質的なGM職のケースはある。93、94年ダイエーの根本陸夫監督は球団の専務取締役を兼務し、フロント業務と現場を統括する全権監督だった。