井口ロッテが、初めてクライマックス・シリーズ(CS)を戦う。シーズンは過密な連投を避けたリリーフ陣の起用が光った。コロナ感染の直撃を受けながらも、なんとかCS圏に滑り込めたのは、そういった「密」を避けながらシーズンを戦ってきた効果が、最後に現れたとも言える。

井口監督といえば、現役時代から密を避けるのがうまかった。毎試合後、たいていが一番風呂。さっと入って1番に球場を後にした。湯船に先客がいるときなどは、シャワーだけで済ませて帰る時もあった。キャンプ中、早朝からのウエート・トレーニングをチームに持ち込んだのも井口。「練習後だとウエート場が混んでるから」と早起きをいとわなかった。

独特の思考がある。数年前、とあるハンバーガーチェーン店のナゲットに異物が混入したニュースが、世間を騒がせたことがあった。当時、そのチェーンへの客足は著しく減ったと聞く。だが、井口は違った。「今ならお店の人たちは、絶対にそんなことがあってはならないって、いつも以上に気を付けると思うんですよ」と、ナゲットを買いに行った。

「逆張り」「あまのじゃく」とも捉えられかねないことにも、井口には合理性があった。そのマネジメント能力が、コロナ禍の特殊な環境下で、より効力を発揮している。14日から始まるソフトバンクとのCS。井口監督の手腕が、楽しみでならない。【14年ロッテ担当=竹内智信】