「7番三塁」でスタメン出場したロッテ安田尚憲内野手(21)が、自身ポストシーズン初本塁打となる2ランを放った。2回、難攻不落のソフトバンク千賀のフォークボールを完璧に捉え、試合の主導権を握った。シーズンで主に4番を張った経験を大一番で披露。チームに勢いを与えたが、自慢の守備にほころびが出て接戦を落とした。マリーンズのキラーワードは「下克上」。まだまだ終われない。

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遅いなんてことはない。1年間苦しみ抜いた安田が花開いた。千賀の「お化けフォーク」を先制2ランし「CS最初の打席で、緊張もありました」。敵地の左翼席一角に陣取る黒い応援団を、一気に沸かせた。

初球の155キロを空振りした。力の限り振った。井口監督はシーズン中「プレッシャーでバットが振れなくなっている」「悪い時は当てにいっている」と何度もこぼした。大舞台では違った。空振り直後にまた直球を振りにいったら、予想外のフォークがきた。「たまたま引っかかっただけです」。下半身で粘り先制点をもぎ取った。

山あり谷あり。谷は割と深かった。シーズン打率は2割2分1厘。過密日程での修正は大変だった。9月末に「2、3試合ヘッドを上げていたのを、戻しました」と話したことがある。試行錯誤で4番に座り続けた。高卒3年以内の4番は球団史上4人目。高い期待と厳しい攻めに「震える場面もあります」ともらした。

背中が大きく見える。レギュラーシーズン後の数日間で見つめ直した。脇の位置のグリップは鼻の位置へ。右肩を少し内側に入れた、右足もやや高めに上げ「シーズン終盤に窮屈になっていたので、飛距離の出るスイングを」と自分にしかないスケールを取り戻した。11月上旬、背中の「5」は投手側からほぼ見えなかった。今は背ネームの「Y」までが見え隠れする。

短期決戦は、1球で引き寄せるうねりの大きさが違う。「1球の重みはあると思います」と独特の空気を振り返った。もう1つ負ければ終わり…誰もが知っている。「まだまだシーズンが終わったわけじゃないので、また3つ勝って、千葉に戻れるように頑張りたいです」。眉を上げて、ひたむきにぶつかる。【金子真仁】

◆CSの主なルール 今季はパ・リーグだけ実施し、優勝のソフトバンクと2位ロッテが対戦。ソフトバンクの本拠地ペイペイドームで開催する。ソフトバンクにアドバンテージの1勝が与えられ、4試合制で勝利数の多いチームが日本シリーズに進出。引き分けを除いた勝利数が同じ場合はソフトバンクが進出する。延長戦は10回まで。10回表終了時や10回裏の攻撃中に後攻の勝ち上がりが確定した場合、その時点でコールドゲームとなる。