熱い視線は、150キロ投手以外にもちゃんと注がれている。捕手として15年間のプロ生活を送ったロッテ福沢洋一スカウト(53)は1人の大学生投手の存在がずっと気になっていた。

「3年生の時の、春のリーグ戦ですかね。目が留まって」と回想する。東都2部の試合を追いかけた。「見に行くたびに打たれない。全然打たれない。私の中の注目選手になりました」。その彼、育成ドラフト4位の専大・佐藤奨真投手(22=関東第一)が16日、都内ホテルで球団と仮契約を結んだ。

身長は177センチ、直球の最速は「142キロ、143キロくらいです」と本人談。数字からは際立った個性は見えない。「打者を打ち取る要素というところで、スピード以外にもいくつかある。それを彼はいくつか備えていました。トレーニング次第で球速は上がるので」と福沢スカウト。「こういう選手がいます」と推薦し、指名に至った。

昨年のドラフト1位では佐々木朗を獲得。今年も球速の速い投手を指名した。対極の存在ともいえる。永野吉成プロ・アマスカウト部長(52)は「パワーピッチャー全盛の中、キレとコントロール、そして“奥行き”という目に見えない特長のある投手」と指名理由を明かす。「柔らかさや球持ちの良さ。教えてできることではない。天性のものだと思います」と、数値化できない魅力を話した。

佐藤本人も、打ちづらさを自分の長所として自覚している。さらなる成長の場は、幼少期から応援しているロッテ。「少年野球のチームに、当時の渡辺俊介選手や今江選手が教えに来てくださって、そこから憧れるようになりました」という。「1歩ずつはい上がって、スカウトの方々の期待を裏切らないように」と誓っていた。【金子真仁】