阪神近本光司外野手(26)がこのほどインタビューに応じ、来季目標に「打率3割」「3年連続盗塁王」「100得点」を掲げた。今季は開幕直後に不振に陥ったが、猛烈な逆襲で自己最高の2割9分3厘をマーク。自慢の足でも2年連続盗塁王を獲得したが、向上心は旺盛だ。リードオフマンとして、阪神では真弓明信や金本知憲ら9人(11回)しかいない3桁得点にも意欲満々。16年ぶりV奪回への気合をほとばしらせた。【取材・構成=只松憲】

  ◇   ◇   ◇

--今季は打率2割9分3厘。3割に乗せたかった

近本 今年は1度も3割の数字を見たことがなかったので、乗せたかったというのはある。(シーズンが)終わってみて数字を見た時に、3割に乗っているか、乗っていないかは大きい。実際にやっている時は、数字よりその日価値のある1本の方が大事だと思う。

--11月1日に自己最高の2割9分8厘をマーク

近本 シーズン中はあんまり意識してなかったです。でも来年、そういうところを目標にするのはいいこと。シーズン中盤から体の使い方が分かってきたので、継続してやる。終盤は逆方向の打球を捕られることが多かった。強い打球、力のある打球を意識しながら、打っていきたい。

--今季は開幕直後に打撃不振。7月下旬までは打率1割台と苦しんだ

近本 開幕から全然良くなくて。去年やったことが間違いだと気づきました。

--間違いとは

近本 去年のオフ、「これ」と思って取り組んだのが、インサイドアウト(※)。(練習でも)それがほぼほぼ占めていた。これができたら、もう少し率が上がると思ったけど、自分には合っていなかった。それが分かったのが一番良かった。バットの出し方が全く違う。去年からやって、良かったことはなかった。

--8月以降、どうバットの出し方を変えて、復調したのか

近本 (バットを)下から出すんです。ヘッドを下げるんです。ヘッドを下げて、ボールとのラインを縦で合わせる。ちょっと難しいですけど。(修正方法は自分で気づいたけど)気づくのが遅かったなというのはありますね。

--自慢の足では2年連続盗塁王を獲得。来季も狙いたい

近本 まだまだ若手だと思うので、そういうところはしっかり狙っていって。チームの得点につながるような盗塁を1個でも多くしたいと思います。

--今季は塁間歩数を固定するなど工夫を重ねた

近本 回転数は12歩。できるだけ負担のない走りにしたいと思います。そういうところを継続しつつ、これから伸ばせるとなれば、リード幅だったり、スタートだったり…。頑張っていこうかなと思っています。

--ベース手前で減速しないスライディングは、昨秋キャンプで筒井コーチと改良に取り組んだ。最初に芝生の上で滑る練習でイメージをつかみ、実際の土で滑る練習に移行した

近本 ハマった練習方法だった。コツをつかんだというか、土の上で走ってスライディングしたりするのも、特に意識しなくてもできるようになりました。

--打率、盗塁以外にこだわりたい数字は

近本 1番を打っている以上、得点でチームに貢献したいので、今年は100得点を目標にやっていた。試合数は減りましたが、今年も去年ぐらいの得点を取ることができた。来年も100得点を目標にやりたいと思っています。

--今オフは例年より期間が短い

近本 11月29日まで練習して、来年キャンプが始まり、すぐ実戦もある。そんなに休めない。野球だけでなく、違うトレーニングや体動かすことは継続してやっていかないといけない。

--具体的には

近本 ウエートトレーニングをベースにします。(今季痛めていた)足のこともあるので水泳とか。

--水泳はこれまで取り組んでこなかった試み

近本 全然泳げなかったけど、(学生時代は)遠泳の実習とかもありました。肩のトレーニングだったり、体を動かすのはいいことなので、試しにやってみようと思っています。

※インサイドアウト 内側から外側へ動く軌道を意味するスポーツ用語。野球の打者の場合は、グリップを先に出すイメージでバットを内から出し、ヘッドを走らせてボールをとらえる打ち方。最短距離でバットが出せ、とらえる確率をアップさせる狙いがある。反対にヘッドを先に出す打ち方は、ドアスイングなどと表現される。

 

▼規定打席到達者でシーズン3割5分以上打ったのは、今季の吉田正尚(オリックス=3割5分)まで、1リーグ時代含めのべ59回ある。阪神では1リーグ時代はおらず、2リーグ分立後に6人(7回)が記録。そのうち球団生え抜きは3人で、近本が3割5分以上打てば、生え抜きでは81年藤田平以来となる。

 

▼近本のスライディング改良 19年の秋季キャンプで筒井外野守備走塁コーチとマンツーマンで取り組んだ。スライディングの際にスピードが減速する弱点克服が目的で、ロスのない到達を追求した。けが防止のため、芝生の上に散水し、固定しないベースを使って特訓。その後は芝生上の移動ベースではなく、土の上で固定ベースを用いた。

 

▼阪神の打者で、シーズン100得点以上を記録したのは、1リーグ時代を含め過去9人、11度ある。過去の到達者はすべて3割を打ち、出塁率も4割前後と高い。出塁が増えれば得点チャンスも増す。阪神では10年のマートン(105得点)以来、10年間出ていない100得点だが、近本がクリアするには、今季3割4分4厘だった出塁率をさらにアップさせる必要がありそうだ。