コロナ禍の特別なシーズンで、ソフトバンクは3年ぶりのリーグ優勝、4年連続日本一を果たした。無観客でのスタート、最後も通常の半分ほどしか観客を入れることができなかった本拠地ペイペイドームも、例年とは違う対応を迫られた。ソフトバンクを支える人々にスポットを当てる、随時企画「支えタカとよ」。今回はドームでファンを盛り上げるために、陰から支えた3人を3回連載で取り上げる。

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打席に向かう登場曲、マウンドへ向かう登場曲を復活してほしい-。ソフトバンクナインから声が上がった。ペイペイドームで行われた無観客のオープン戦は、あまりに静かだった。3月10日巨人戦から復活。08年から登場曲などをタイミングよくかける仕事を担当しているDJみゆきさん(38)の出番も、ようやくやってきた。

「登場曲って、選手が今、何にはまっているのか、どういう曲が好きなのかがファンの人にも分かると思うんですよね」。柳田は8月30日の日本ハム戦から、日曜の第1打席はテレビドラマ「半沢直樹」のテーマ曲を流した。「ドラマが放送している期間はずっとという話でしたので、今日は日曜だっけ? と、スタッフで確認していました。でも『今日は本編じゃないから、流さなくていい』と言われた時は驚きましたね」と笑った。新型コロナウイルスのためドラマの撮影が遅れ、9月6日は通常放送ではなく、生放送スペシャル。続きが気になる本編の日でないと気持ちが乗らないのか、柳田流のこだわりだった。

モイネロは9月ごろから1試合ごとに瑛人の「香水」を希望。順番を間違えないように、この日は何を流したかのメモを残しておくことも仕事だ。わずか10秒ほどだが、選手が曲のこの部分を聞きたい、ファンがこの部分で盛り上がりたいという箇所を、試合展開を乱すことなくスッとかける。

石川は自身のために作ってもらった、アイドルグループももいろクローバーZの佐々木彩夏が歌う「仕事しろ」を流し、マウンドに上がる。みゆきさんは「石川投手は毎回、まったく同じところで曲が終わるんです。投球練習から、曲も含めてしっかりイメージトレーニングをしているのかもしれませんね」。その日の状態、準備などで、多くの投手が曲の音を消すタイミングが変わる中、印象に残っているという。

コロナ禍の影響は、みゆきさんにもあった。ウグイス嬢やスタジアムDJと同じ放送ブースに座り、音を操作する。隣の部屋のディレクターから窓越しに指示が来るのだが「今季はマスク姿なので、口の動きでは指示が分からない。身ぶり手ぶりでやってもらっていました」と苦笑いした。

登場曲を出すタイミングも今季は特別だった。昨年までは右翼席の応援団がヒットを打った後などトランペットで演奏していたものがなくなった。「間ができないように、昨年までよりも早めに登場曲をかけていました」と振り返る。

今季は若手の川瀬が選手たちのいたずらで「笑点」のテーマソングに変えられることもあった。選手の思いつき、リクエストにも即座に音源をそろえ応えている。リーグ優勝直前には、イニング間に故障でリハビリ中の今宮の登場曲をかけるなどしてチーム一丸のムードを演出し、ファンを楽しませた。13年目のベテランDJが、4年連続日本一を後押しした。【石橋隆雄】