マー君、おかえりなさい! ヤンキースFAの田中将大投手(32)が28日、古巣楽天との契約に基本合意した。24連勝で球団初の日本一へ導いた13年以来8年ぶりの日本復帰。球団はメジャー移籍後、準永久欠番としていた背番号「18」、巨人菅野の8億円を超える日本球界最高となる推定年俸9億円プラス出来高の2年契約で迎え入れた。石井一久GM兼監督(47)をはじめ、球団の熱意が実った。入団会見は後日、行われる。東日本大震災から10年の節目に、唯一無二の右腕が東北に再び光を差し込む。

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歓喜、希望、勇気-。東北にかけがえのない財産を刻んだ右腕が、夢物語を加速させる。田中が古巣楽天復帰を決断した。この日の午前。交渉役を務めた石井GM兼監督へ電話を入れた。

「楽天でお世話になります。精いっぱい優勝に貢献できるように頑張ります」

球団はすみやかに正式な契約交渉に入った。年俸9億円プラス出来高の日本球界最高年俸。選択肢には単年契約も含む中で話し合い、2年契約で迎え入れた。同日午後にオンライン会見に臨んだ同GM兼監督は「連絡を受けた時は、ほっとしました。彼の決断をしっかりと受け止められた」と落ち着いた表情で、歴史的瞬間を振り返った。

功績に敬意を示してきた。ヤ軍との7年契約を満了した今オフ、田中側にはメジャー球団から1500万ドル(約15億7500万円)規模のオファーもあったとみられるが、コロナ禍により移籍市場も停滞。楽天は13年オフのメジャー移籍後も、国内での自主トレ用に球団施設を開放するなど交流を継続し、今オフも日本復帰決断時に備え、球団一丸で環境整備に奔走した。

同GM兼監督は自身の米ネットワークを駆使し動向を注視。「(米国に)居場所がないということはなく、最初から彼はいろんなオファーを選べる中にいた。その中での決断は非常に大変」と右腕が意思を示すまで条件提示はしなかった。「彼の選択をしっかりと待って、考える機会を与えられた。契約にはそこまで時間はかからなかった」と明かした。

コロナ禍で社会に不安、暗雲が垂れこめる中、今年は東日本大震災から節目の10年。「特別なシーズンに導かれるのもスペシャルな選手にしかあり得ない。球界だけじゃなく、社会全体にも明るいニュースを届けてくれる」と運命を感じる。13年に東北を立ち上がらせた正真正銘のスーパースターが、再び背番号「18」を背負い、杜(もり)の都から輝きを放つ。【桑原幹久】