阪神取材班がキャンプで興味を持ったテーマ、事象を取り上げる随時企画「推しポイント」がスタートします。第1回は昨季1軍登板ゼロに終わった小野泰己(26)と川相昌弘臨時コーチ(56)のマンツーマン指導に注目。未完の大器は「完璧主義からの脱却」で復活のきっかけをつかみ、課題克服への挑戦も本格化させていた。
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ブルペンが熱気を帯び始めた午前11時30分。静まりかえったサブグラウンドで川相臨時コーチ、小野が話し込んでいた。ホームベース付近。川相コーチが手でボールを転がす。捕球した小野はステップを確認しながら、三塁方向に送球する構えを取る。2人は何度も同じ動作を繰り返した。
ここ数年、小野はフィールディングに苦しみ続けていた。バント処理後の三塁送球がどうしても暴れてしまっていた。復活へ、なんとしても課題を克服しておきたかったのだろう。名手から金言を受け取り、右腕の表情は晴れやかだった。
「ピッチングと一緒で足を使って投げよう、と。これまでも『足を使え』と言われてきたけど、どう足を使うのかを明確に教えていただきました」
近年の苦悩を目の当たりにしていただけに、満面の笑みにこちらまでうれしくなってしまった。
小野に注目していたのには訳があった。日刊スポーツ評論家・緒方孝市さんの言葉が耳に残っていたのだ。キャンプイン初日だった前日、緒方さんはブルペンで各投手の投球に熱視線を送った後に言った。「一番目を引いたのは間違いなく小野だよ」。翌日、広島3連覇監督の言葉を伝えた。「確かに昨日は良かったんです!」。本人も手応えはあるようだ。
プロ2年目の18年に自己最多7勝。それが昨季は1軍登板なし。ウエスタン・リーグでも制球難に苦しみ、防御率11・51と大崩れした。それでも昨秋の宮崎フェニックス・リーグでは最速155キロも計測して好投を連発。聞けば、「完璧主義」と決別した結果なのだという。
「今まではミットのここしか投げてはダメと思っていたけど、今は高めでもいいから強い球を、と。完璧を求めると混乱してしまう。それを去年経験した。完璧は難しい。自分を少し許すじゃないけど、今は余裕を持ってやれています」
真面目すぎる好青年。時に「遊び」も必要なのかもしれない。コーナーを狙いすぎて自滅するぐらいなら真ん中にズドン-。大胆スタイルに変身した右腕がフィールディングも改善すれば…。虎の開幕ローテ争いは混沌(こんとん)としそうな気配だ。【佐井陽介】



