阪神ドラフト1位の佐藤輝明内野手(21=近大)が、背番号「8」の大先輩、中日福留の前で後継者にふさわしい活躍を見せた。中日との練習試合(北谷)に「3番三塁」で先発出場。初回に松葉から中前に先制適時打を運んで6戦連続安打とすると、守備でも4度のゴロを軽快にさばいた。21日は広島との練習試合(宜野座)で昨季新人王の森下と激突する。

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試合前から佐藤輝はドキドキだった。

昨年まで阪神で「8」を背負った大先輩とようやく初対面。遠く離れた距離で一瞬だったが、「初めて。ほんのちょっとですが、あいさつできてよかった」と笑った。その後はベンチにどっしり座る福留から熱い視線を背に受けながら、27スイングで柵越え3本。試合に入ると、三塁の守備位置から「すごい雰囲気がありました」と、打席に立つ球界最年長の威圧感を感じていた。

後継者に恥じない活躍を三塁の守りで見せた。過去2試合は1度しか守備機会がなかったが、4度もゴロが来た。中でも6回は高橋周の三塁線への鋭い打球に187センチ、94キロの巨体を滑らせ逆シングルでキャッチ。「三塁線の打球とかも、逆シングルで捕った方が次も投げやすいんで」と、体のひねりも送球に利用した。

滑った右膝の下には黒土が付いていた。近大時代はノックで打球に飛び込まず、スマートなプレーばかりする佐藤輝に対し田中秀昌監督(63)が「あいつのユニホームはいつも白い」と苦笑いしていた。それでもリーグ戦になると、果敢に横っ跳びする実戦派だった。三塁も守れるという強い思いが球際の強さにつながった。

ようやく三塁での実戦守備を多く見られ、矢野監督は「球際、難しい打球もあった。反応自体はよかった」と評価した上で、「守備はまだまだ。もっとうまくなってもらわな困る」と上達を望んだ。佐藤輝も「強い打球が多くなる感じなので、しっかり準備していきたい」と気を引き締めた。

打っては1回1死二塁で左腕松葉から先制打を放つなど、チャンスでの変わらない強さを発揮。実戦6戦連続安打、対外試合4試合で7打点と、福留のように頼もしい存在になりつつある。21日の広島戦では、昨季10勝3敗、防御率1・91で新人王に輝いた森下と初対戦する。背番号8は佐藤輝、と言われるようになるため、難敵との対決で経験値を高める。【石橋隆雄】

▽阪神井上ヘッドコーチ 不器用そうに見えてあいつ結構、起用だから。外野だろうと、内野だろうといける。まずまず。経験を積ませてあげることが今は一番かなと思って見ています。

▽阪神川相臨時コーチ(テレビの解説で訪れ) 基本にというか、柔軟に対応している感じには見える。しっかりとした練習をもっとやっていけば、さらに良くなる可能性はある。彼の持っているものをどんどん生かしていければ、すごく良くなるんじゃないか。

▽巨人横川スコアラー 外野よりスムーズにやれているなと。見た目よりやっぱり動けるし、器用。バッティングもそうですけど。「見た目にだまされたらダメ」じゃないけど。今はね、うまい、器用だなと思いますね。

▽広島岩本スコアラー 難しいワンバンもグラブさばき柔らかく、捕球してアウトにしていた。実戦でああいうふうにこなせるというのは、対応力があるんじゃないかなと感じます。