ツバメもおののく快投連発だ。阪神藤浪晋太郎投手(26)が、練習試合・広島戦(宜野座)で対外試合初戦に臨み、3イニングを3奪三振2安打1四球で無失点と好投した。最速156キロの直球でバットを押し込み、宝刀フォークの切れ味も健在。実戦2試合連続のゼロ封で開幕ローテ入りへ大前進し、シーズン開幕カードを戦うヤクルト「007部隊」からの警戒が強まっている。

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藤浪は登板後、高速フォークを苦笑いで辛口採点した。「あの1球ぐらいですかね。思ったところに投げられたのは」。それでもたった1球のインパクトは強烈だった。1回2死、1ボール2ストライク。3番野間を内角低め147キロフォークで三振に仕留めた。3球連続で同じ球種を選択。ベース板手前に鋭く落とし、楽々空振りを奪った。

21年初実戦の7日紅白戦は直球主体で2回無失点。対外試合初戦となった広島戦は変化球がテーマだった。カットボール、スライダーの制球は上々。最速156キロの直球で次々とファウルを稼ぐ中、とりわけ丁寧に確認作業を続けたのがフォークだった。計45球のうち9球もチョイス。「ちょっと浮き気味だった。緩いというか、なでているというか…」。生命線の球種だけに簡単に納得しないが、存在感は抜群だった。

昨季終盤、背番号19は復活を印象づけた。制球難の改善、球団最速162キロをたたき出した直球が注目を浴びる中、地道に復調を後押しした球種が高速フォークだった。19年までは「どうしてもボールゾーンに投げようとしていた」と言うが、カウント球にも使用することで配球の幅が一気に広がった。ワインドアップに再挑戦する今季も、150キロに迫るフォークは絶対に欠かせない勝負球となる。

今キャンプは雨で流れた14日広島戦も含め、日曜日の登板予定が続いている。3月26日から週末の開幕3連戦を戦うヤクルトの片岡スコアラーは「(開幕カードに)来る可能性が大」と予想した上で「全然暴れていない。球威があるし、変化球のキレは超一流」と警戒を強める。

この日は3イニングを3奪三振2安打1四球で無失点。打者11人と対戦して、外野に飛ばされたのは4番クロンを詰まらせた右飛、8番石原の左前打だけだった。矢野監督も「至って順調」と納得顔だ。

右脇腹負傷で高橋の開幕ローテ入りが絶望的となり、新助っ人右腕アルカンタラも来日のメドが立たない状況。すでに先発4番手級まで序列を上げており、期待は高まるばかりだ。「やりたいことができているから、次の課題がどんどん出てくる」。再覚醒の1年へ、大器が確実に歩を進めている。【佐井陽介】

▽福原投手コーチ(藤浪について)「落ち着いて投げられたと思うし、良かったのかなと思います。(変化球の精度は)良かったと思いますよ。まだまだここから、いいものを目指してやってほしいかなと思います」

◆NPBで高速フォークを誇った投手 最速158キロを誇った伊良部秀輝(ロッテほか)は、フォークボールでも140キロ台中盤を計測。斉藤和巳(ソフトバンク)は192センチの長身から140キロ台後半のフォークを投げ下ろし、打者を圧倒。大谷翔平(日本ハム)もフォークが140キロを超え、165キロを計測した試合では151キロのフォークを投じ球場をどよめかせた。国内現役では上沢直之(日本ハム)山本由伸(オリックス)らが140キロ台の高速フォークを武器にしている。