阪神ドラフト1位の佐藤輝明内野手(21=近大)が、規格外のパワーで26日の開幕戦で対戦するツバメ倒デモを敢行した。

キャンプ最終実戦のヤクルトとの練習試合(浦添)に3番左翼で出場。その第1打席で、高々と上げた飛球を左翼手に浅い左飛と勘違いさせて前進させた後、慌ててバックさせて頭上を越す先制二塁打にした。佐藤輝だからこそなせるパワー長打で、これが決勝点。相手投手が小川に決定した開幕戦も勝利の一撃、頼んまっせ!

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佐藤輝が相手野手の想像を超えるパワーを発揮した。ヤクルト先発木沢尚文投手(22=慶大)とのドラフト1位対決。1回1死一塁、初球の151キロ直球をたたいた打球は、ちょっと詰まった感じで高々と左翼へ舞い上がった。左翼中山は浅い左飛と思い、1度前に出た。だが、打球はその姿をあざ笑うようにグングン伸びた。中山は慌てて背走してグラブを差し出したが、打球はその頭上を越え、フェンス手前で弾んだ。

3戦10打席ぶりの安打で、これが先制の決勝タイムリー。26日の開幕戦で当たるヤクルトとの前哨戦で相手に規格外のパワーを見せつけ、白星予行を敢行した。だが佐藤輝は「まあ、普通のフライだったんで」と不満顔。この時、風は右翼から左翼へ、スコアボードの旗はなびく程度にしか吹いていなかった。それでも左翼手が打球判断を誤るほど、予想外の伸びだった。

日刊スポーツのストップウオッチで、打って打球が落ちるまでを計測すると6秒68。近大時代、あるスカウトがこの日のように高々と上がった飛球を見て言った。「飛球の滞空時間が6秒を超えるのが、強打者としての私の中でのひとつの基準。佐藤輝はその打球が打てる」と。滞空時間の長さが、長距離砲の指標のひとつ。かつての本塁打王、田淵幸一も滞空時間の長いアーチが特徴だった。佐藤輝の場合、それが逆方向にも伸びるから恐ろしい。

試合前練習ではヒヤリとする場面もあった。左翼守備で足を滑らせて痛めた様子で、しばらくうずくまり、トレーナーとベンチに戻った。だが、10分後には笑顔で打撃練習に戻る体の強さも見せた。試合では1つ年下ながらヤクルトで4番を務める村上の3安打を肌で感じた。「追い込まれてから逆方向にいいファウルとか打っていた。見ていて、ちょっと甘めに来たら安打にしていた。それは見習うところかなと思います」。日本を代表する左の強打者のよさも貪欲に学ぶ。

キャンプでは主に3番を打ち続けた。実戦は11試合で打率3割6分6厘、2本塁打、9打点。開幕3番へ、5日から始まるオープン戦でも結果を残す。「しっかり調整してアピールしていきたい。しっかり強く振ってが自分の持ち味なので貫いていきたい」。自分のスイングを貫き、レギュラーに突き進む。【石橋隆雄】

▽中日金子スコアラー(佐藤輝について)「もともと逆方向に伸びる打球は打てる。疲れはあると思うが、結構フル出場していて本当に体も強い。打撃はずばぬけているし、いいキャンプだったんじゃないか」

<佐藤輝のキャンプ実戦>

◆底知れぬ怪力 対外試合デビューの2月9日の日本ハム戦(宜野座)でプロ初アーチ。16日の楽天戦(宜野座)ではバットを真っ二つに折りながら、右翼ファウルゾーンの柵の向こうへ運んだ。18日のDeNA戦(宜野湾)では9回に、電光掲示板を超える推定140メートル弾をぶっ放した。

◆三塁で好成績 4試合に三塁で出場し、17打数7安打、1本塁打、4打点、打率4割1分2厘。外野での3割3分3厘(24打数8安打)を大きく上回った。

◆左腕も苦にせず 12日の紅白戦では高橋から二塁打を放つなど、左投手に14打数4安打で2割8分6厘。昨年の近本の対左腕シーズン打率と同じだった(140打数40安打)。

◆固め打ち 全11試合中、複数安打は4度あった。2月9日の日本ハム戦3安打、18日のDeNA戦で4安打と猛打賞も2度。第1打席に強く、安打と四死球を合わせ8試合で塁に出た。