これが虎の黄金ルーキーだ! 阪神佐藤輝明内野手(21=近大)が、オープン戦初打席でソロ本塁打をたたき込んだ。敵地ソフトバンク戦に「3番左翼」で先発。1回2死、開幕投手を務めるソフトバンク石川から左翼ホームランテラス席へ運んだ。球団の新人では87年八木裕以来という衝撃的なオープン戦デビュー。ファンの前で初めてプレーし、ドラフト1位の実力を存分に見せつけた。

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ペイペイドームに衝撃が走った。オープン戦初打席。1回2死走者なし。佐藤輝が、ソフトバンク石川の145キロ外角直球を高々と打ち上げた。白球は左翼テラス席へ。「最初はレフトフライかなと思ったんですけど、意外と伸びてくれて。入ってよかったです」。プロ初の有観客試合で、名刺代わりの決勝アーチをたたき込んだ。

もはや誰もが新人とは思わないだろう。相手は昨季最多勝&最高勝率で2冠の石川。4年連続日本一軍団の開幕投手に内定している。「投球テンポの速い投手なので、構え遅れのないように意識した」。春季キャンプで放った2本塁打はいずれも中堅から右翼方向だった。規格外のパワーを誇る体がボールに自然と反応すれば、逆方向でも楽々と柵越えできることを示した。

佐藤輝と石川はともにアイドルグループ「ももいろクローバーZ」のファン、通称モノノフ。プレーボール直前、そのももクロが石川のために作った曲「仕事しろ」がドーム内に流れた。「(仕事)しとるわ、と思うかもしれないですね。でもうれしいでしょうね」。昨夏に登場曲のことをツイッターで知った佐藤輝は、石川のことをうらやんでいた。同曲が流れた約5分後。「そんなに意識はしなかった」と言うが、ももクロパワーを注入し合った石川とのモノノフ対決を制した。

衝撃アーチで11年前の雪辱もできた。小6だった10年冬。阪神タイガースジュニアに選ばれ、NPB12球団ジュニアトーナメントの舞台が、ペイペイドーム(当時ヤフードーム)だった。大会1カ月前に右肘を痛めた佐藤輝は、三塁コーチとして出場。タテジマ初打席は幻に終わっていた。あれから10年の月日が過ぎた。「また同じ舞台でプレーできてうれしいです」。真のタテジマ戦士として福岡に大きな弧を描いた。

9回は岩崎から左前へ運び、4打数2安打1打点。矢野監督も「やっぱり魅力あるよね」とほれ直した。虎のオープン戦初戦の主役は間違いなく佐藤輝。「1打席1打席しっかりアピールできるようにやっていきたいです」。黄金ルーキーの大暴れが止まらない。【只松憲】

▼阪神の新人がオープン戦初打席で本塁打を放ったのは、八木裕(三菱自動車水島)が87年3月1日阪急(現オリックス)戦で記録して以来、34年ぶり。3点を追う5回に山沖から同点3ラン。阪神の新人がオープン戦で本塁打を打ったのは15年3月3日ソフトバンク戦の江越以来。公式戦で阪神の新人による初打席本塁打はない。新人以外に阪神でプロ初打席本塁打は森田一成が11年7月26日中日戦で記録しただけ。

▼新人のオープン戦初打席本塁打は18年2月24日巨人戦の楠本(DeNA)以来。