マー君が本番モードに入った。楽天田中将大投手(32)が今季4度目の登板となるDeNA戦に先発。自身のミスで1失点も5回4安打、65球でまとめた。ピンチでギアを入れ替え打者を威圧。カットボールを解禁し、全球種を駆使して打ち取るなど、女房役の太田との呼吸も合ってきた。球速は今季最速の150キロを計測。シーズン初登板となる開幕2戦目、27日日本ハム戦(楽天生命パーク)へ、いよいよ仕上がってきた。

じりじりと、沈んだ。3点リードの4回無死一、三塁。田中将が前のめりに捕手のサインをのぞく。宮崎の低めをミスなくつき、カウント2-1から4球目。外角低めいっぱいの145キロで投ゴロに仕留めた。だが二塁併殺を狙った送球は、やや三塁側へそれた。「僕がいいところに投げられなかった」と悪送球で失点。天を仰ぎ、右太ももをたたいた。

シーズンさながらの予行演習だ。続く無死一、二塁からは細川をやや高めツーシームで遊ゴロ併殺。大和は外角スライダーで空振り三振に切った。「ずるずるいかないで、すぱっと切れたのはよかった」と得点圏に走者を置けば、甘く入る球は皆無。ギアが上がれば、そう簡単には崩れない。

だからこそ、メリハリがつく。追い込まれてからでは勝ち目はないと、DeNAは初回、先頭桑原、2番関根とファーストストライクの直球から果敢に振ってきた。しかし田中将にとっては「驚きはない」と想定内。1巡目は6人にカーブ、スライダー、スプリットの変化球で入った。打者の目線から最も近く、体感速度が増す内角高めも有効活用。縦横偏りなく散らし、緩急もつけて、アウトを重ねた。5回2死では桑原にカットボールを実戦初試投。2球続けて遊ゴロに仕留めた。計19人中13人に変化球で入り、「早いカウントから打たせてアウトにできてよかった」。打ち気をそらす対応力にも本番モードが表れた。

過去3度の登板では大枠のテーマを決め、課題をあぶり出した。今は「終わっている話」と捉える米国に比べて軟らかいマウンドへの対応は、左足をソフトに着地させるなどの工夫で修正。今回はシンプルに「抑えること」をテーマに全球種を繰り出し「前回の反省を踏まえた投球を、うまくゲームのマウンドで出せたので一定の満足はあった」と仕上げに入った。

快晴の静岡に“マー君効果”も重なり、急きょ右翼外野席が開放された。心身ともに本番へのボルテージも右肩上がり。次回登板は中5日で20日巨人とのオープン戦(東京ドーム)で7回、100球前後を見込む。「まだまだ精度を上げていかないと。今日できたこと、できなかったことをしっかりと整理して調整したい」。難攻不落の18番が、完成型に近づいてきた。【桑原幹久】