打者は3回に1度打てば好打者だが、投手は1球の失投が命取りになる因果な職業だ。

DeNA上茶谷大河投手(24)は、6回2死まで好投していた。直球は最速148キロと走り、カットボールやチェンジアップも効いていた。初回に3連打で1点を失ったが、併殺打でピンチを切り抜けた。1回裏にルーキー牧の6号ソロですかさず同点に追い付いてもらうと、後はすいすい。5回には3者連続三振を奪った。

雨脚が一気に強まった6回は、2安打と申告敬遠で1死満塁となった。開幕戦でチームがサヨナラ本塁打を浴びた5番亀井が打席に入った。初球はチェンジアップで見逃しストライク。2球目ら5球目までファウルが続いた。6球目。147キロ直球で見逃し三振を奪った。どんどんと気合が高まっていた上茶谷は、ほえた。観客の注目を一身に浴びた。球場のボルテージは最高潮を迎えた。

しかし、この直後、舞台は暗転した。次打者大城に対した、2ボールからの3球目。139キロのカットボールが、ホームベースの手前でワンバウンドした。捕手嶺井が体で止めにいったが、ボールは一塁側に転がった。この間に、三塁走者松原に続き、昨年まで同僚だった二塁走者の梶谷も一気に生還した。

緊迫していた試合の雰囲気が、少し緩んだ。上茶谷は大城を四球で歩かせると、香月に右翼へ3ランを浴びた。吉川にも2者連続アーチを浴びた。

上茶谷 初回、先制点を与えてしまいましたが、味方打線がすぐに追いついてくれたので、切り替えて投げることができました。それだけに6回のイニングは粘り切れずチームに申し訳ない気持ちです。

ベンチに戻ると、長い時間、タオルで顔を覆った。泣いていたかどうかは、分からない。反省の弁を述べた。連敗中だけに、どうしても勝ち越し点を与えたくなかったという心中が、コメントから透けた。

三浦監督は、亀井までの投球を高く評価した。「先制され、走者が残ったところで踏ん張って、上茶谷らしく両コーナーに投げられていた」。だが、1球の暴投が、勝敗を分けたのも事実だ。「痛い。ベース付近でワンバウンドしたし、ぬれてましたから一塁側に転がった。(一挙2失点は)仕方ない。力が入り過ぎた」。その後の連続本塁打で、勝敗は完全に決した。「切り替えができなかったのかな。ボールは悪くなかったが、何とかしてほしかった」。気迫が伝わる投球内容はほめたいが、最終的に7失点という結果となった以上、手放しでほめられない。微妙な言い回しにならざるを得なかった。

打線が2回から5回の間に、1点でも取っていれば、展開は変わっただろう。8連敗中の得点は、7試合が2点以下、1試合は3点だ。ソト、オースティンの外国人が打線に加わったが、爆発には至っていない。好機はつくっても適時打に欠ける展開が続く。「スコアラーからデータをもらって対策しているが、結果が出ない以上、違う対策をしていかないと。最後まで選手たちは元気を出して、諦めずにやっていた」。打撃面での打開策を模索しながら、ハマの番長は懸命に前を向いた。【斎藤直樹】

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