阪神ドラフト1位佐藤輝明内野手(22)がドラフト制後の新人最速となる33試合目で10号本塁打を放った。

DeNA戦(横浜)の4回に中川から右翼席最上段へソロ。4月に場外弾を放った敵地を再びどよめかせた。大山主将が背中の張りで離脱する中、前回2日は体験入部だった「4番三塁」で頼もしい一撃を披露。投手陣が打ち込まれて4連勝で止まったが、佐藤輝がいれば心配は無用だ!

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パワーに技を兼ね備えてこそ、アーチストの証明だ。4回先頭の第2打席。佐藤輝は左肘をたたみ、右肘を抜くようにバットの芯をぶつけ、内角高めをさばいた。中川が投じた145キロ直球は約5秒後、右翼席最上段でバウンドして「業務スーパー」の看板にぶち当たった。

「追い込まれていましたけど、しっかり自分のスイングを心がけて強く振り抜けた。うまく反応できたのでよかったです」

直前に2度、内角高めの直球をこすって三塁側へファウルにしていた。「内は頭にあった」と3度目で仕留める対応力が光った。2試合ぶりとなる10号ソロ。33試合目での到達となり、ドラフト制後では03年村田(横浜)の36試合を抜いて新人最速となった。阪神の新人左打者では初の2桁弾と記録ずくめ。本塁打はヤクルト村上、山田に並びトップ。26打点も巨人岡本和に並びトップで、堂々のリーグ2冠だ。

記念の1発を生んだ器用さは、兵庫・甲陵中時代から変わらない。規格外のパワーで、試合前に練習で使用していた公園の防球ネットをたびたび越えた。民家に迷惑がかかるため、本来の左打ちではなく、右で打つことを命じられたという。チームメートだった松本拓さん(23)は「器用に普通の右打者と遜色なく打ち返すんです。テルはパワーだけじゃなかった」と証言。周囲が驚く技術を当時から持っていた。

前回4番だった2日広島戦は大山が休養日。矢野監督が「体験入部」と表現した起用で8号逆転満塁弾を放った。その大山が離脱する中、すんなりと代役を託され「4番佐藤輝」では2戦連発。横浜スタジアムでは4月9日に場外弾を放っており、またもインパクトを残した。矢野監督は「もちろんあの当たりやし、いいホームランやった。2桁というのも、結果的にこれぐらいのスピードで10本はたいしたもん」と称賛。「もっと打ってほしい状況や場面があるんで。上を目指してやっていってくれたら」。大型新人に高いレベルの注文も忘れなかった。

投手陣が打ち込まれ、両チーム計26安打の乱打戦に敗れた。連勝は4でストップしたが、新4番が機能したことは明るい材料だ。「ランナーがいる場面で打点を挙げるのがクリーンアップの仕事だと思う。打点を挙げられるようにやっていきたい」。節目の1本も佐藤輝には通過点。満足せず次を目指す。【中野椋】

▼佐藤輝が今季10号。新人の2桁本塁打は16年吉田正(オリックス)以来で、阪神では80年に18本の岡田以来、41年ぶり5人目。佐藤輝はチーム33試合目で到達。新人では59年桑田(大洋)の27試合、50年戸倉(毎日)の32試合に次ぎ、49年大岡(大映)に並び3位タイのスピード10号となり、左打者では84年小早川(広島)の53試合を抜いて最速。新人で本塁打王を獲得した58年長嶋(巨人)や新人最多タイの31本打った86年清原(西武)より早い10号だった。この日は満塁弾を放った2日に次いで2度目の4番。4番で2本塁打の新人は72年佐々木恭(近鉄)以来で、初4番試合から4番で2戦連発の新人は2リーグ制後初めて。