純矢のために! 同じドラフト1位の先輩が、後輩へ大きなプレゼントを贈った。0-0の5回裏。無安打無失点ピッチの先発西純に代打が送られた直後だった。1死から近本光司外野手(26)がバット振り抜くと、打球は大きな放物線を描いた。「切れるかな…」。心配をよそに、吸い込まれるように右翼ポール際へ着弾した。

「純矢も本当に頑張って投げて、5回までゼロで抑えてくれていたんで。なんとしてもここは1本、なんとしても塁に出て、勝ちをつけてあげたいなとは、思っていました」

今季の甲子園初本塁打は、後輩の初勝利を強力アシストする先制の3号ソロとなった。ベンチ前では、はち切れんばかりの笑顔で待っていた西純とグータッチ。18年ドラフト1位の先輩が、貫禄を見せた。

試合前のロッカーで見かけた西純は、緊張の面持ちをしていたという。「頑張れ、とは言いましたけど。声をかけられるのも気になるとは思う。そっとする部分はそっとして」。気遣いを忘れず、先輩はプレーでけん引。「下の子が増えてきているんで、僕ももうちょっと引っ張っていけるようにやっていきたい」。後輩の活躍を“刺激”に、3安打で今季最高の打率2割8分1厘まで上げた。5月は13試合で4割2分。開幕直後の不調がうそのように打ちまくっている。

この日、開幕から打線を引っ張ってきた2番糸原が下肢のコンディション不良で出場選手登録を抹消された。「(責任が)のしかかってますけど」と重圧は否めないが、力強く続けた。

「1、2番でずっとやってきて、助けてもらってる部分もありますし、今度は僕が頑張らないといけない場面だと本当に思う」

新世代の力で勝利した夜。打のヒーローは、新たな決意を固めた。【中野椋】