夢を追ったマウンドで、未来を作る1勝をつかんだ。楽天2年目の滝中瞭太投手(26)が、「日本生命セ・パ交流戦」の巨人戦で7回途中3安打無失点。自身2連勝で3勝目(2敗)を挙げた。プロ初登板となった敵地東京ドームでは、社会人のホンダ鈴鹿時代に都市対抗野球大会で3度登板。指名漏れも経験するなど苦労を経て、強力先発陣の一角を担う。チームは連敗を2で止め、ソフトバンクと同率首位に並んだ。

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思わず顔をしかめた。周囲にとっての単なる1安打も、滝中には痛恨の一打だ。2点リードの7回。先頭吉川を追い込むも、内角直球を左前に落とされた。「今日も7回か…」。6回まで2安打無失点。「1人1人圧力を感じていたので、丁寧に丁寧に低く投げることしかできない」と快調に飛ばしたが、一打の直後に交代を告げられた。東京ドームの三塁ベンチから、救援陣へ思いを託した。酒居が無失点でしのぐと、滝中は手をたたき、喜んだ。

2年前の7月15日。同じく東京ドーム。ホンダ鈴鹿の一員として都市対抗野球大会初戦にエースとして臨んだ。鷺宮製作所を相手に6回まで無失点。1点のリードをもらい、7回のマウンドに立った。だが、1死から四球、左安、味方の失策で満塁とし、押し出し死球で降板。同大会に3度出場し、いずれも初戦敗退。「最後の試合が印象に残っています」と涙をのんだマウンドに、楽天の一員として戻った。

常にがけっぷち。負けられない戦いは、プロでも変わらない。前回登板の5月20日2軍戦でバッテリーを組んだ足立と1軍で初コンビ。フォーク、チェンジアップ、シンカーと多彩な落ち球を駆使し、積極的にスイングを試みる巨人打線を封じた。「首を振ったのも1回だけ。かなり引っ張ってもらいました」。7回は投げきれなかったが「信頼しているリリーフ陣なので感謝しかないです」と支えられ、白星をつかんだ。

先発陣の競争は激しい。岸、則本昂、田中将、涌井、早川らがそろい、枠は限られている。「開幕ローテ、その次に1年間ローテを守るということを目標にしていた。そのためにはある程度結果を残さないといけない。数字でも、内容でもしっかりと食らいついていきたい」。たかが1勝、されど1勝。与えられたマウンドで力の限り、腕を振る。【桑原幹久】