これぞ、巨人の4番だ。岡本和真内野手(24)が「日本生命セ・パ交流戦」ソフトバンク戦の5回、14号決勝ソロ。2年連続で4連敗を喫した日本シリーズとオープン戦を含め、ソフトバンク戦の連敗を14で止めた。5月は自身最多タイの9本塁打と上昇カーブを描き、歴代7人目となる巨人で先発4番の通算100本塁打に王手をかけた。ひと振りで苦手意識を振り払って16試合ぶりの勝利をもたらした主砲が6月攻勢の先頭に立つ。

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待っている約3分が、とても長く感じられた。同点の5回1死。岡本和が和田の直球を完璧に捉えた打球は中堅フェンスのギリギリで跳ね返ってきた。審判団はリプレー検証へ。確証が持てなかった岡本和は二塁ベース上で、ただただ祈っていた。腕を組んだり、二塁上で、立ったり、しゃがんだり。「(検証後に審判が)『手を回してくれ!』と思ってました」。約3分後、願った通りの光景を見届けると、ゆっくりと本塁へと駆けだした。「なんとか塁に出ようと思っていたので良かったと思います」と静かに喜びに浸った。

鷹から勝ちどきを上げるまでの2年間は、とてつもなく長かった。ソフトバンクには19年6月22日の対戦を最後に14連敗。日本シリーズは2年連続で4連敗と、苦手意識がチームに色濃く満遍なく充満していた。

重みを増す鷹の呪縛を、主砲も感じないわけはなかった。今年3月の、敵地でのオープン戦。打撃練習後に「この球場にくると、なんか体が重たく感じるんですよ…」と漏らした。14連敗中の計15試合は打率2割3分6厘、3本塁打、7打点。巨人の4番を張る男として、重い空気を1日でも早く振り払う必要性と責任を、肌で痛感してきた。

だからこそ、この一打の行く末にはこだわった。どんな結果でもどっしり受け止める主砲が「やらんよりは、やったほうがいいと思いますし」と二塁ベース上で右手を上げ、リプレー検証を請うた。「やっぱりずっと負けているので。今年はしっかり交流戦で首位に立つために3連敗は回避したかった。今日は勝ててよかったなと思います」。1発の感触より、待ち続けた白星の喜びをかみしめた。

ひと振りで試合を決めた4番に、原監督は「ずいぶんストレスもたまっていただろうし、そういう意味ではそれが全て出たんじゃないでしょうかね」と、うなずいた。首位阪神とのゲーム差は4・5と変わらない。143試合の中の1試合と言えば、そうかもしれない。岡本和は「(日本シリーズとは)また違いますからね。でも、3連敗するよりかはなんとか1勝できたのはいいかなと思います」と言った。今季中に再び相対する可能性があるのは、日本シリーズのみ。その前に、ようやく重い霧は晴れた。今秋に3年連続の頂上決戦となれば、総力戦の末につかんだ、待ち焦がれたこの1勝をもたらした岡本和の一撃は、さらに大きな意味を持つ。【浜本卓也】

▼岡本和が勝ち越しの14号。同選手が先発4番で打った本塁打は99本目で、巨人では7人目となる4番100号に王手をかけた。5月の岡本和は22試合に出場して9本塁打。月間9本塁打は19年8月に並び自身最多タイとなったが、今月は9日の7号が逆転サヨナラ、12日の8号が同点、16日の9号が先制、19日の11号が先制、26日の13号が逆転、30日の14号が勝ち越しと、9本のうち6本が肩書付き。月間6本の殊勲弾は初めてだった。

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