エースも戻ってきた。先発した巨人内海哲也投手(32)が、5月29日楽天戦以来となる2勝目を挙げた。持ち味の駆け引きと粘りで、好調カープ打線を6回1失点に抑えた。4番阿部の2ランで勝ち越した後の7回も続投だったが、投球練習中に左足をつり降板。大事に至らず、試合後は「10勝します」と誓った。プロ入り後初めての経験となる左肩痛で、久しぶりにファーム暮らしを経験。3男1女の大家族にしか歩めない、復帰までの道のりに「潜入」した。

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内海の復活は、家族とともにあった。6月5日に左肩痛で登録を抹消。2軍でのリハビリ生活の傍らには、いつも聡子夫人と4人の子どもたちがいた。「家族がいるから自分も頑張れる。嫁さん、4人の子供たちは僕が幸せにせんとあかん」。肩の不調は先発ローテ定着後初めてでも、〝ビッグダディ〟に不安がっている暇などなかった。

ジャイアンツ球場に通う日々は久しぶりだった。午前6時前に起床。7時には球場に入って練習した。体を追い込んだ後には、子供たちが待つ幼稚園へ急いで向かった。「今日、2回目のシート打撃や ! 」。次男旺太君ら園児を相手に、巨人のエースが打撃投手を務めた。「疲れるはずないやんか。子供たちの笑顔を見たらな」と〝連投〟で心身の疲労を癒やした。

内海には、もう1つの家族があった。中学時代、同じクラブチームに所属し、07年オフからトレーナー契約を結ぶ保田貴史氏。一家で内海の自宅近くに引っ越し、全面的にバックアップしてくれた。「また、ここからはい上がるで」。自分のことのように落ち込む保田氏に、声を掛けた。故障に責任を感じ、つらい思いをさせた。だから、ともに前に進もうと誓った。

6月20日、2軍でリハビリ中だった沢村も誘って、焼き肉店で〝家族会〟を開いた。「いつも、ありがとう。これから、拓一(沢村)と一緒に優勝に貢献します」と締めた。そんな大黒柱の背中を、優しく見守ってくれたのは家族だった。1軍復帰2戦目の7月26日中日戦、登板前に聡子夫人から長文の「LINE」が届いた。内容は明かさなかったが、「つらいのは自分だけちゃう。嫁さん、子どもたちもそう。だって、家族やから」と熱いものが込み上げた。体には力が宿った。支え、時に支えられる。困難はみんなで乗り越える。【久保賢吾】