広島鈴木誠也外野手(27)が、2打席連発で自己最多の32号をマークし、今季初の6連勝に導いた。ともに阪神西勇輝からで2回は左翼へソロ、4回1死二塁ではバックスクリーンへ一時逆転の2ラン。9月は6戦連発や28日に自己最多に並ぶ3年ぶりの30号をマークするなど、これで13本塁打。月間13発は9月としてはセ界初で、自身でも18年8月の12発を上回って最多となった。

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鈴木誠の打棒が、甲子園で火を噴いた。2回は先頭で西勇のスライダーを捉え、最後は左腕1本で振り抜く形で左翼へ。キャリアハイの31号ソロで1点差に迫った。4回1死二塁ではバックスクリーンへ。打ち終わった瞬間は悔しそうだったが、長い滞空時間を挟んで一時逆転の32号2ランとなった。驚きの表情を隠せず、ダイヤモンドを1周し「たまたまっす。今日は風です。勝てたのでよかったです」と控えめに振り返った。

9月は猛烈に暴れ回った。序盤にはプロ野球記録へあと1試合まで迫る6戦連発をマーク。28日阪神戦では自己最多に並ぶ3年ぶりの30号をマークし、残り21試合を残して自己最多を更新した。9月としてはセ界初の月間13本塁打。自身でも18年8月の12本を上回って最多となった。9月は打率3割8分1厘、22打点と圧倒的な力を示した。

アーチ量産の裏には、シーズン中に改良した相棒の存在があった。7月の球宴でチームメートとなった同学年のDeNA佐野からバットを借りた。鈴木誠は「こっちの細いグリップの方がしっくり来る」と急きょアシックス社の担当者に連絡し、改良を依頼。昨季から使用する長さ86・5センチ、重さ約900グラムのバットから、グリップ部分を1ミリ細くした。新しい相棒は東京五輪期間中に手元に届き、後半戦で使い続けている。シーズン途中でバットを変える決断を下し、ミリ単位での道具へのこだわりが、好調を支える要因の1つとなっている。初の月間MVPに輝いた7、8月から勢いづいている。

チームは2カード連続の3タテで今季初の6連勝。9月は13勝11敗1分けで2カ月ぶりに勝ち越した。まだ5位ながら、破竹の勢いで上位を猛追している。佐々岡監督は「明日地元に帰って試合が続くので、1試合1試合全力で戦うだけです」と一喜一憂せずに先を見据えた。主砲が、下位に沈むチームを全力プレーで引っ張っている。【古財稜明】