ゴジラがアフリカで伝道師になる。一般財団法人アフリカ野球・ソフト振興機構(J-ABS)は11月30日、都内で会見を開き、ヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏(47)が「アフリカ55甲子園プロジェクト」のエグゼクティブドリームパートナーに就任すると発表した。同プロジェクトはアフリカに甲子園大会をつくり、日本の高校野球と同じスタイルでの青少年育成を目指す。コロナ禍で見通しは立っていないが、松井氏が将来的にアフリカに足を運び、競技普及に一役を担う。

野球にとって空白地帯の多い大陸。だがタンザニアでは「甲子園」と銘打ち、14~17歳が参加する大会が14年から計8回、開催されてきた。「『甲子園』を目指して白球を追う若者がアフリカにもいると聞いて、とても感動しました。アフリカの青少年を育てていこうという構想に深く感銘を受けました」と共感した。

松井氏にオファーを出したのはJ-ABSの友成晋也代表理事だ。慶大野球部出身で国際協力機構(JICA)でアフリカに渡り、25年間で約3800人に指導。規律を重んじる日本の野球が現地での教育現場で受け入れられた。将来的にはアフリカの55の国と地域への普及を目指す中で、人格者で知られる松井氏に魅了された。目標の数字が背番号と同じ「55」であることにも縁を感じ、8月にニューヨークで情熱を伝えた。「松井さんの存在を子どもたちに伝えていきたい」と言葉に熱が帯びた。

タンザニア甲子園は12月12日から開幕予定。コロナ禍で松井氏は現地には行けないがメッセージを寄せる。当面はニューヨークとオンラインでつなぎ、打撃指導なども計画中。「状況が許せば、私自身もアフリカに行ってみたいと思っています。アフリカの少年少女とキャッチボールをしたい」。野球の世界的普及は五輪での競技復活の流れも生む。甲子園に育まれた松井氏が、世界を股に掛ける。【広重竜太郎】

○…「アフリカ55甲子園プロジェクト」は22年から25年計画でスタート。26年までの5年間で7カ国、32年までの10年間で17カ国に事業展開し、各国で全国大会が開催されることを目指す。ドリームパートナーとして法人に1口100万円の年間契約、個人に月1000円から寄付を募る。詳細はJ-ABSの公式HPにて。

◆野球界とアフリカ 91年には名球会のメンバーがケニアでマサイ人に野球を指導した。村田兆治氏、東尾修氏らが参加。2つの集落から20~25歳の青年を15人ずつ集め、ルール説明や実技指導を行った。村田氏は自らお手本を示し「マサカリ投法」も伝授した。