阪神藤浪晋太郎投手(27)の直球はなかなか前に打ち返されなかった。

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最速は本人基準ではやや控えめな156キロ。それでも丁寧にコースを突いた直球ストライク27球のうち、実に15球でファウルを稼いだ。フェアグラウンドに飛ばされた打球はわずか4球だった。

「調子自体は良くなかった。その中でいい意味でだましだましというか、ごまかせた。状態が決して良くない中でもそこそこの投球、ゲームメークをすることは大事。そういう意味では収穫かなと思います」

低めの自己採点がむしろさらなる期待感を募らせる。5回を75球でまとめ、6奪三振2四球で無安打無失点。文句なしの結果と内容で首脳陣を安心させた。

すでに開幕ローテ入りは決定的な立場。ただ、5日楽天戦では4回5失点と苦戦していた。「どうしても力みが出た」「配球が単調になりすぎた」。女房役の坂本と前回を反省。力感のないフォームから緩急を強く意識し、中日打線に的を絞らせなかった。

1回は無死二塁から2番根尾を144キロフォーク、3番平田はスライダーで空振り三振に。大阪桐蔭の後輩と先輩から2者連続三振を奪い、甲子園を沸かせた。4番ビシエドは内野ゴロ2本で片付け、ドラフト2位の5番鵜飼を5球連続変化球で空振り三振に仕留める場面もあった。

110キロ台のカーブも含めた変化球が直球をさらに引き立たせた形。矢野監督は「晋太郎には速い球という武器がある。変化球をうまく操ると、こういう投球になる。シーズンでもこれぐらいやってほしい。もっともっと可能性を持った投手なので」と納得顔だ。

今後は19日オリックス戦で京セラドーム大阪の予行演習を終え、開幕2戦目の3月26日ヤクルト戦に向かう流れが確実な情勢。「もうちょっとフォームのバランス、タイミングを…。今日は初回の先頭から四球を出してしまった。最初からかみ合って投げられるようにしたい」。残すは細部の詰めのみだ。【佐井陽介】

▼阪神藤浪が5回を投げ無安打無失点。今季10年目の藤浪は、これまで公式戦、CSや日本シリーズ、オープン戦を含めても、2イニング以上投げた試合では無安打無失点はなく、今回が初めて。球宴では15、16年にそれぞれ3回、2回を無安打無失点。1軍練習試合では17、18、20年に2イニング、16年には紅白戦で4回無安打無失点がある。