ロッテは22日、小沼健太投手(23)を支配下選手登録したと発表した。背番号は育成時代の121から「50」に変更になる。

「野球が仕事って、すごい幸せだなって。あらためて思います」

2月23日、オリックスとの練習試合後のこと。しみじみと情感あふれる言葉に、これまでの歩みが詰まっていた。

東総工(千葉)を卒業後、国内独立リーグである「BCリーグ」に挑戦した。埼玉武蔵ヒートベアーズに入団し、環境を変えるために茨城アストロプラネッツでもプレーした。独立リーグでの4年間、シーズンオフにはいろいろなアルバイトをしたと、ドラフト指名直後に聞いた。

「1年目はスポーツショップと、ホテルの中華料理店のホール担当を掛け持ちして。2年目はお菓子工場で。茨城に移った3年目は、福祉施設で支援員の仕事を」

阪神の宜野座キャンプで打撃投手や補助のアルバイトをしたこともある。シーズン中は野球に打ち込み、オフはバイトに励む日々。九十九里浜が目と鼻の先にある実家には、年末年始以外は帰る余裕もない。家賃3万円の部屋に住み「自炊も全部やっていました」。

大変な毎日がかけがえのない経験になった。入団会見で、他のルーキー同様に「あなたの野球人生を象徴する数字は?」と尋ねた。小沼は「4です」と答えた。

「独立リーグに4年間いたからです。独立リーグにいなければここにいないと思っているので」

茨城の福祉施設の人々から心温まる寄せ書きをもらって入寮し、1年少々。念願の支配下登録を受け、あらためて振り返る。

「自分は独立リーグでもチームを渡り歩いて、他の人とはけっこう違う経験をしてきたので。たくさんの方が関わってくれたおかげでここまで来れたので、みんなに感謝したいです」

BCリーグ出身の育成選手経験者の先輩には、昨季盗塁王の和田康士朗外野手(23)もいる。和田は高校では硬式野球部に所属していない。いろいろな道で、NPBを目指す若者が増えている。

「とにかく、あきらめないことですね。僕も、4年間独立リーグにいたというのは珍しいことだと思うんですけど、その中でも“まだできる”と思ってやってきたので。あきらめないことだと思います」

1つの目標をクリアし、小沼は後輩たちにエールを送った。【金子真仁】