伝統のユニホームが泣いている。阪神が1リーグ時代の「大阪タイガース」の復刻ユニホームで今季初の巨人戦(東京ドーム)に臨んだが、開幕7連敗となった。日刊スポーツ客員評論家の吉田義男氏(88)は勝利への執念が足りないことを指摘。苦境のチームにカツを入れた。

【詳細ライブ】阪神泥沼の開幕7連敗、1点差に追い上げるも及ばず 球団ワーストさらに更新

西の名門の伝統が泣いている。開幕7連敗。チーム創生期の「大阪タイガース」のユニホームをまとった一戦は1点差に迫るも、追いつけなかった。

吉田 惜しい試合だったと言ってあげたいのはやまやまだが、勝負の世界は勝たないと意味がない。開幕戦で7点差をひっくり返されてから、ずっとその負けを引きずっているようにみえる。わたしもまとったオールドスタイルのユニホームは、背中に名前も入ってないし、非常にシンプルでかっこいいが、野球までシンプルではあきませんがな。ファンサービスとはいえ、ユニホームというのは大事だと思っています。特にタイガースを支えてきた先輩方の苦労に応える意味でも、もっとねちっこくいかないと。わたしに言わせれば、チーム全体から執念が伝わってこないんです。

藤浪が1、2回に、坂本、ポランコ、大城の3人に完璧なソロ本塁打を許した。続く3回無死から、吉川の高くバウンドした打球を中野がはじく。この失策が

糸を引いて2死満塁から丸に右前適時打。4回は坂本の中犠飛で、計6点を失った。

吉田 中野のフィールディングですが、あれを難しい打球とおっしゃる人がいるが、わたしに言わせれば軽率なプレーでした。少しずつ上手になってると思ってただけに残念だ。開幕からみていると、まだまだ「球際」に弱い。そしてベンチは中野を2打席打てないとベンチに下げるわけですが、もっと守備の重要性を分からせる起用があってもいいんじゃないですかね。5回の守りから二塁に入った木浪のゴロの追い方などをみてると、引退間近になった選手の追い方のようにみえて仕方がなかった。チーム失策数がどうこうでなく「球際」に強いショートを育てないといけないし、投手を助ける野手でセンターラインを固めないと優勝は難しい。そこは正直いって不満です。ディフェンスというものをいかに考えているのか。そこはこれからチーム作りをするフロントにもお願いしときますわ。

過去に3度の阪神監督に就いた吉田氏は、日本一になった翌1986年(昭61)に開幕4連敗スタートだったが3位を保った。

吉田 最終回は開幕7番だった5番の大山が2ランを打つわけで、そのあたりの見極めがどうなのかという疑問はくすぶっている。わたしもいくらでも連敗を経験したからトップのつらさはよく分かります。特に阪神の監督は苦しい。わたしのときは今と違ってムチャクチャたたかれた。しかし厳しい批判も、勝負の世界に身を置いてるからこそで迷わないことだ。また時には厳しさも必要だと思います。矢野監督には負の流れを断ち切って、このカベを乗り越えてほしい。まだまだこれから。ペナントレースは始まったばかりだと言ってあげたい。

【取材・構成=寺尾博和編集委員】