後世にまで語り継がれる投球が、令和の春に生まれた。10日のオリックス戦で28年ぶりに完全試合を達成したロッテ佐々木朗希投手(20)が、17日の日本ハム戦でも8回14奪三振で1人の走者も許さず。17イニング連続無安打は48年真田重蔵(大陽)の16回を更新し、プロ野球新記録となった。

蓄積疲労を考慮され、記録継続のまま8回降板で2試合連続パーフェクトは夢に終わった。それでも背番号17が、野球人生最多の2万9426人の大観衆の前で、160キロ台も1軍公式戦通算100球に到達。とんでもない世界に入っている。

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【写真たっぷり詳細ライブ】完全試合達成の佐々木朗希が再び快投! 17日のロッテ-日本ハム戦

前人未到、前代未聞。あと1イニング投げれば、そんな記録を手にしていたかもしれない。佐々木朗は役目を終え、ベンチ前列に進んだ。すぐには座らない。9回、守護神益田がマウンドへ行くのを見送った。

「もう1イニング投げればということだったんですけど、今日は野手に助けられた部分もあったので。しっかりと自分の仕事はできたかなと思います」

1週間前、完全試合と奪三振記録がクローズアップされた。その裏で実は、高校3年夏の岩手大会準決勝以来、31試合ぶりの完投だった。「(プロで)初めての完投で、もちろん疲れもあったので、少しでも回復できるように重点的にやりました」。具体的には? と問われると「寝て食べた」。そう言って、報道陣を笑わせた。

2万9426人。野球人生で、一番多くの人の前で投げた。完全試合が、希代の直球が、これだけ多くの人の心をつかんだ。「最初、幕張メッセと勘違いしてるんじゃないかなって」。隣接施設での人気アニメ「鬼滅の刃」イベントを絡ませ? 笑わせつつ「選手としてすごくうれしいですし、毎試合そういう形になれるように頑張りたいと思います」とほほ笑んだ。

走者を1人も出さず、注目を一身に集めながら試合が進んでいくこと、17イニング。誰も知らない世界で何を感じるのか。

「記録を目指している中だったらいいことだと思いますが、そういう時に限って走者が出て苦しくなるので。投手の仕事は点を取られないこと。僕の中では打たれても別にって思っていますし、その中で苦しい中で走者を背負わないように。そこら辺をうまく、試合展開を見ながらやりたいなと思っています」

視野広く、たくましく。打者を見ることに「そんな余裕はなかったです」と振り返ったプロ初登板からもうすぐ1年。落ち着いて、勝利への道筋を描けるだけの心技体を身につけた。チームは敗れたが、また勢いづける剛速球を。連続アウトは52人で止まらず、人々の興味はますます色濃くなる。この先、次回登板までの“中6日”のワクワクも含めての、伝説だ。【金子真仁】

▽日本ハム近藤(佐々木朗に3打数無安打2三振) 何とかチーム全員で攻略の糸口を探っていましたが、あらためて佐々木投手のすごみを感じました。今日のようなゲームをものにできたことはチームにとって大きな意味を持つと思う。これから1試合でも多く、今日のようなゲームを勝っていけるようにしたい。

▽日本ハム上沢(佐々木朗と投げ合い7回4安打無失点) 相手の投手から、なかなか点を取れないと分かっていた。素晴らしいピッチングを見ていてワクワクした。僕も点を取られなければ、負けることはないと分かっていた。そこを意識してずっと投げていた。