巨人が異例の“スピード公表”に踏み切った。28日、都内の球団事務所で10月のドラフト会議に向けたスカウト会議を行い、満場一致で高校通算68本塁打のスラッガー・高松商の浅野翔吾外野手(3年)を1位指名する方針を固めた。大塚淳弘球団副代表(63)は名前こそ明言しなかったが、1位指名を念頭に置きながら絶賛。高校生野手の1位指名での入団となれば14年の岡本和以来で、高校生外野手だと球団初となる。競合必至のスラッガー獲得への熱意を12球団最速の“公表”で示した。

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口に出さずとも、頭にある名前は「浅野翔吾」だけだった。原監督も参加した約3時間のスカウト会議後、大塚副代表が報道陣の前に現れた。ドラフト会議まで約1カ月。例年この時期に1位を明言することはなく、昨年も「(ドラフト当日の)11日朝までに決める感じです」と語っていた。

しかし、今年は違った。大塚副代表は「1位は間違いなく将来性でいきますよ。くじ引きになるんでしょうけど、そこにいきますよ」と明言。浅野も出場した米国でのU18W杯のメンバーかと聞かれると「そのメンバーですよ。別に隠してもしょうがないから。体は小さいですけど、3拍子そろってパンチ力もあるしね右にも打てるしね、足も速い。スター性ですよ、一番はね。将来スーパースターになるような素材だなと思ってますよ」と笑顔で認めた。

異例の“スピード公表”で熱意を示し、駆け引きも仕掛けた。今年は突出した候補選手が少ないともいわれ、夏の甲子園を沸かせた浅野に人気が集まることが想定される。大塚副代表が「(くじを)外したときに外野手にいくのか内野手いくのか、他のチームは何位で(誰に)指名にいくのか、そういう話し合いですね」と話すように、外れ1位でも競合する可能性がある。巨人は外れ1位候補6人でのシミュレーションも実施するなど、競合覚悟で浅野を熱望するが、競合回避で有望選手の一本釣りにかじを切る球団が出てきてもおかしくない。真っ先に“公表”することで、他球団のドラフト戦略をけん制する狙いも見える。

巨人はU18W杯に担当の岸スカウトを派遣。木製バットへの対応力の高さも確認した。水野スカウト部長は「将来性もそうですけど、早いうちに出られるんじゃないかなという期待感もあります。右の吉田(正)になってほしい」と、身長170センチの浅野の未来に、同173センチのオリックスの主砲を重ねた。ドラフトでは浅野をはじめ、野手を中心に支配下5人と育成9人の指名を想定している。【浜本卓也】

○…球団15連敗中のくじ引き役は、原監督が務める方針となった。指揮官自身も通算1勝11敗で6連敗中だが、大塚副代表は「やっぱり監督が引かないとだめだって話をしてね。もう当たりますよ。大丈夫ですよ」と力を込めた。昨年は隅田知一郎(西日本工大)が4球団の競合となり、今村球団社長がくじを引いたが西武に当たりくじを持っていかれている。

◆巨人の1位抽選 3球団以上が競合した1位(1巡目)の抽選は95年福留孝介(PL学園)以降、昨年の隅田知一郎(西日本工大)まで15連敗中。原監督は過去の抽選で1勝11敗と苦戦しており、引き当てたのはソフトバンクと2球団競合だった08年大田泰示(東海大相模)だけ。同監督の3球団以上競合は0勝9敗と的中がない。

◆巨人のドラフト1位候補の公言メモ 18年根尾昂(大阪桐蔭)、20年佐藤輝明(近大)ら、近年はドラフト前日に公表するケースが多い。昨年は投手と宣言したものの名前は公表せずに本番に臨んだ。過去のスピード公言では92年10月に長嶋茂雄監督が2度目の監督就任会見で松井秀喜(星稜)にラブコールした。11年には菅野智之(東海大)の1位指名を前年12月に公表。日本ハムに競合で敗れたが、翌年ドラフトでは4月に改めて1位指名を公表し、単独指名につなげた。

◆長身ではないドラフト1位 浅野は身長170センチ。過去の1位指名選手では、99年田中一徳外野手(PL学園-横浜=165センチ)、09年荻野貴司外野手(トヨタ自動車-ロッテ=172センチ)、同今宮健太内野手(明豊-ソフトバンク=171センチ)、13年森友哉捕手(大阪桐蔭-西武=170センチ)、18年近本光司外野手(大阪ガス-阪神=170センチ)、19年小深田大翔内野手(大阪ガス-楽天=168センチ)らがおり、長身ではなくてもセンスを評価された。

◆浅野翔吾(あさの・しょうご)2004年(平16)11月24日生まれ、香川県高松市出身。小学3年時に野球を始め、屋島中では捕手。中3時にU15日本代表に選出され、アジア選手権優勝。高松商では1年夏の代替大会からベンチ入り。外野手で2、3年夏の甲子園出場。甲子園通算4本塁打。U18W杯日本代表。目標の選手はアストロズのアルテューベ。170センチ、86キロ。右投げ両打ち。

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