ヤクルト嶋基宏捕手兼コーチ補佐(37)が28日、神宮球場で会見を行い、今季限りで現役を引退することを報告した。

楽天で野村監督、星野監督の教えを受けた嶋は、指導者を志す決意とともに、家族への思いや、東日本大震災当時の思い出などを振り返った。

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-決断のタイミング

今シーズンは兼任という形をとらせていただいて、その時にある程度、今年1年やったらと覚悟は出来ていた。引き際も非常に大事と感じていますので。

-野球生活を振り返って

大学2年から捕手を始めて、まずそこで人生の大きな分岐点。楽天に入団し、野村監督に捕手のいろはを教えていただいて、そこが第2の分岐点。本当にいい人と巡り合えて、指導をしていただいて、それが今につながっています。

-野村監督からの指導

どれだけミスしても我慢強く使っていただきました。「キャッチャーを育てるには何年もかかる」と僕を使い続け、応えたいとやってきました。

-野村監督に報告は

まずは本当にありがとうございました。これから僕も、野村監督のように名将と言われるような指導者になっていきたいと思っていますと。

-指導者として今後

まだ具体的にはないです。野球は進化していると思いますし、もっともっと勉強して、分かりやすく伝えていける指導者にならないといけないなと。

-今まで野球に費やしてきた時間を今後どうしていく

(言葉に詰まりながら)仙台を離れて、家族を残して妻にも非常につらい思い、大変な思いをさせてしまった。子どもたちの成長もあまり近くで見届けることができなかったので。これからは、しっかりと見届けていきたいと思います。

-家族にかけたい言葉

いつも「頑張ってね」と家を送り出してくれるんですけど。これからは逆に「気をつけて学校にいってこいよ」って(涙)。そう言ってあげられる父親でいたいなと。

-野球人生で大事にしてきたこと

最初は有名になりたいとか、自分勝手にやっていたけど、2011年の大震災を機に、やっぱり野球は人のためにやらないといけないなと。人のため、誰かのためにという思いが、一番強い信念かもしれない。

-中村や古賀、内山壮らを指導。後輩捕手へ

中村には、これからも口酸っぱく体は大事にしろよと伝えていきたい。古賀と(内山)壮真は、もっともっと野球を好きになって研究して。僕も野村監督や星野監督に「キャッチャーは野球博士でないとだめだ」とよく言われていたので。

-一番印象に残るシーン

星野監督に初めて会った時の恐怖心が、僕の野球人生で一番衝撃的だったかもしれないです。小さい頃は中日の試合をよく見ていたので、椅子を蹴り上げたり…。その監督が目の前にいるというだけで、身が引き締まる思いでした。

-11年の「見せましょう、野球の底力を」のスピーチが印象に残る

言わなければよかったというか、あの言葉がすごい重圧になった時期もありました。でも13年の優勝で全て肩から荷が下りたのは事実ですし、野球には人を喜ばせたり感動させたりする力があるというのを、13年の優勝もそうですけど、スワローズに来て2回の優勝で、あらためて感じることができました。

-野球とは

難しい質問ですね。宝物ですかね。小さいときからずっと1つのボールを追いかけてやってきて、グローブやボールを宝物のように扱ってきて、いまはその野球自体が宝物なのかな。

◆嶋基宏(しま・もとひろ)1984年(昭59)12月13日、岐阜県生まれ。中京大中京では3年春に甲子園出場。国学院大を経て06年大学生・社会人ドラフト3巡目で楽天に入団。新人の07年から主力に定着し、13年には球団初のリーグ優勝と日本一に貢献。10、13年にベストナインとゴールデングラブ賞。11、13年に田中将大と最優秀バッテリー賞。19年限りで楽天を退団し、20年からヤクルトでプレー。15年プレミア12日本代表。179センチ、84キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸2000万円。