阪神が2年連続のクライマックスシリーズ(CS)進出を決めた。巨人がDeNAに敗れ、今季最終戦となる2日のヤクルト戦(甲子園)を待たずに3位が確定。開幕9連敗など歴史低迷からの大逆転に、矢野燿大監督(53)は「この3位を素直に喜びたい」と感慨だ。今季限りで退任する指揮官は、2日がレギュラーシーズンのラスト采配。有終白星からCSも勝ち抜き、日本シリーズで甲子園に帰ってくる意気込みだ。

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午後7時58分、巨人がDeNAに敗れ、その瞬間阪神のCS進出が決まった。矢野監督は球団を通じ、正直な思いを明かした。「素直に3位で喜んでどうするんだという自分もいるけど、この3位を素直に喜びたいという自分もいます」。

今季限りでの退任を宣言して臨んだが開幕9連敗し、17試合でわずか1勝。借金最大16の歴史的な低迷でお先真っ暗だった。だがそこから奇跡的な巻き返しに転じ、大逆転でAクラスに滑り込んだ。最後は巨人、広島との三つどもえ。勝負どころだった27日からのヤクルト2連戦で連勝し、両球団にかけたプレッシャーが効いた形になった。

「選手たちが粘りに粘ってつくってくれたチャンス。あきらめないのは『オレたちの野球』で大切にしてきた部分。続けてやってくれた結果がこの3位」。どん底からはい上がってきたナインをたたえた。

大一番になるかもしれなかった2日のヤクルト戦は前売りで完売。一転消化試合になったが、レギュラーシーズンでは矢野監督最後の甲子園になる。「そんなありがたいことはない。やっぱりいいものを見せて喜んでもらいたいのは強くある」。CSファイナルステージで戦う可能性があるヤクルト。有終の勝利で嫌なイメージを植えつけたい。

訃報に接し、決意を新たにした。この日、プロレス界のスーパースター、アントニオ猪木氏が死去。「オレもプロレスが好きで、テレビで見たり、ゴールデンタイムでやっていて」と憧れの存在だった。「外国人に向かっていくとか。あの時代に、そういう姿勢に勇気をもらえた。ビンタされて喜ぶとか、そんなんないやん。オンリーワンの特別な方。すごいことをして、多くの方に元気を与えた」。元気を与えることは矢野監督も描く究極のテーマ。下克上日本一への道が開けた限り、勝ち続けてファンを元気づける覚悟だ。

横浜、神宮とCSを勝ち抜けば、甲子園に帰って日本シリーズを戦える。CSで3位から勝ち抜いたのはセでは17年DeNAだけ。3位からの日本一は10年ロッテの1度しかない。険しい道を切り開き、新たな歴史をつくる。【石橋隆雄】

▼阪神のCS進出は2位だった21年に続いて2年連続10度目。これまでのCSはいずれもファーストステージからで、14年と19年の2度ファイナルステージに進んだ。借金を抱えてプレーオフ、CSに進出したのは8チーム目。阪神では15年に70勝71敗2分けの借金1で進んで以来、2度目。また、矢野監督は19年の就任以来4年連続でAクラス入りで、岡田監督時代の05年1位、06年2位、07年3位、08年2位以来となった。矢野監督は新型コロナの影響によりCSがなくなった20年を除いてすべてのシーズンでCS進出を決めた。

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