今季限りで退任する阪神矢野燿大監督(53)が日本シリーズの甲子園決戦を誓った。シーズン最終戦は、延長の末にベンチ入り26人をすべて使い切る異例の全員野球で執念ドロー。1人でもケガをすれば没収試合という綱渡り采配だった。聖地で矢野コールを浴びた指揮官は下克上を宣言。8日から2位DeNAとのクライマックスシリーズ(CS)、ファースト・ステージ(横浜)に臨む。

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ライト席から自然発生的に矢野コールが起こった。最終戦スピーチを終えてファンの声援に応えた矢野監督は、1度ベンチに戻り掛けた。それでも鳴り止まないコールに、グラウンドに戻るとガッツポーズで応えた。「あれだけコールをしてもらえるとね。黙って帰るわけにはいかない。もちろん、もう1回ここに帰ってくる気持ちなので、最後というより感謝の気持ち」。感謝と決意の矢野ガッツだった。

あわやの事態だった。6回に1点を先制するも、9回にケラーが打ち込まれ試合をひっくり返された。その裏に梅野、栄枝のタイムリーで今季16度目の延長戦に突入も、この時点でベンチに残っているのは才木1人だけ。調整の意味合いもあって選手をつぎ込んでいただけに、「いやー、ドキドキした。最後の試合が没収試合になったらどうしようかなっていうね」と肝を冷やした。

前夜に巨人がDeNAに敗れて4年連続のAクラスが確定した。開幕9連敗から始まったシーズンは143試合を終えて68勝71敗4分けの借金3。今季限りで退任する矢野監督は「5割にも達していない。3位だったけどいいのかな。そのような気持ちもありました。でも、僕の正直な気持ちは、めちゃくちゃうれしかったです」と大観衆の前で偽らざる思いを明かした。

ひやひやドキドキ。最後までジェットコースターのようなシーズンだったが、矢野監督は晴れやかだった。「僕らは挑戦者。選手たちがまだ野球をやれる時間をつくってくれた。その試合を味わいながら、思いっ切り楽しみながら、そして挑戦して。そういう野球をしていきます」。もう失うモノはない。奇跡のドラマを巻き起こして再び甲子園で右手を突き上げる。【桝井聡】

▼今季の阪神は開幕から9連敗を喫した。開幕から7連敗以上した過去7チームの最終順位は54年広島と02年ロッテの4位が最高。Aクラス入りしたチームがなかったが、今年の阪神は開幕9連敗から3位。「Aクラス入り0%」の負のデータを覆したシーズンとなった。

○…シーズン終盤まで最多安打争いを演じた近本と中野は、タイトル獲得とはならなかった。中野はマルチ安打を放つも157安打、近本は154安打。この日を終えた時点でリーグトップ中日岡林の161安打に及ばなかった。中野は「収穫としては打席での対応力」とレベルアップを実感。「最後まで日本一を目指して監督を胴上げできるように頑張っていきたい」とうなずいた。また、近本は30盗塁でリーグ1位。2位ヤクルト塩見、中日岡林に6個差で、2年ぶりの盗塁王をほぼ確実とした。

○…高卒2年目の高寺は甲子園初安打で沸かせた。「7番二塁」で先発。0-0の6回、先頭でサイスニードの148キロ直球をたたき、左翼フェンス直撃の二塁打から先制点の流れをつくった。ただ、同点で迎えた9回裏2死満塁では5球ファウルで粘った末に空振り三振。「(甲子園で)1本打てて良かった」としながらも「他の打席で打ちたかった思いが強いです」と納得しなかった。

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