広島長野久義外野手(37)が巨人に無償トレードされることが2日、両球団から発表された。19年1月に巨人へFA移籍した丸の人的補償として移籍。今年まで4年間で296試合に出場した。高い打撃技術だけでなく、気配り目配りができる人間性からチームメートから慕われた。球団と来季の契約交渉を続ける中で、巨人とのトレードがまとまった。14年目シーズンとなる来季は、5年ぶり復帰の古巣で迎える。

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クールな男が、泣いた。長野は広島での4年間や広島ファンへの思いを聞かれた質問に2度、瞳を潤ませた。「これ書いておいてくださいね」とジョークでこらえていた涙は、3度目の質問であふれた。報道陣に背を向けて人さし指で流れる涙を押さえ、最後はすすり泣き。「まさか泣くとは思わなかった。良かった、カメラいなくて」。さまざまな感情を抑えきれず、照れくさそうに笑った。

突然の発表となった。広島と巨人の両球団で無償トレードが成立。5年ぶりに古巣巨人への復帰が決まった。多くの試練を与えてきた野球の神様からの最後のプレゼントなのか。「球団間で話し合っていただいて、僕の将来のことを考えていただいた結果だと思います」。両球団に感謝を口にした。

広島加入も、突然だった。巨人へFA移籍した丸の人的補償として加入。社交性は高いが、自ら積極的に周りを巻き込むタイプではない。広島流を重んじながら、徐々にチームに溶け込んでいった。「一から人間関係を構築するというのが最初は不安だったんですけど、気がつけば4年間で倍の信頼できる仲間たちができたのが一番良かったと思います」。気付けば巨人時代と同じ愛称「チョーさん」で後輩から慕われた。

広島の4年間では出場機会を多く得られず、思うような結果を残せなかった。2軍でも若手とともに汗を流し、チャンスに恵まれない選手を励まし続けた。「いい若い選手はいっぱいいる。このままみんな明るくやってほしい」。感傷的に言葉を紡ぎながらも、周りを笑顔にしてきたいつもの長野節で締めくくった。「送別会は受け付けていないので。それだけは書いておいてください(笑い)」。

18年までつけていた7番は空き番号のまま。ツイッターでは「#背番号7」がトレンド入りした。古巣復帰は運命だったのか。「カープとジャイアンツと優勝争いできるように頑張りたい」。新たな夢を追う瞳が輝いて見えた。【前原淳】