ロッテのドラフト1位、専大・菊地吏玖投手(4年=札幌大谷)は、思わず天を仰いだ。同点の4回2死二塁。駒大の8番神宮に、フルカウントからの144キロ直球が甘く入った。2ラン。苦笑いしながら動かした唇は「まじか…」と動いているように見えた。

初回、駒大の1番林(DeNA3位)に粘られた末に、フルカウントから四球を許し、盗塁、失策、適時打で先制を許した。この日はカウント3-2から、良くない結果になりがち。「狙ったところに強い球を投げようとして、それが力んで、ゾーンにいかなくて」。持ち前の低めがボール球になり、初回だけ32球を要する苦しい流れだった。

東都野球リーグならではの入れ替え戦。「どんなチームか分からない中で、様子見で入ってしまって。向かっていく気持ちが足りなかったです」。心の乱れが細かな制球ミスにつながり、緊迫の試合でのみ込まれた。ネット裏ではロッテ榎スカウト部長、担当の福沢スカウトも見守り、ロッテグッズを身につけて訪れる観客もいた。そんな中でドラフト1位の真価を示しきれず「本来の3~4割でした」と自慢の直球への自己評価も厳しかった。

「今日は1球の失投がこういう結果を招いてしまって。短期決戦はお互いに死力を尽くして戦うので、心構えというか、いつもより強く(気持ちを)持っていかないとのみ込まれてしまう」

まだ1部昇格の可能性はある。この日の4回降板も、第2戦以降の登板を見すえたベンチの判断だった。降板後もベンチで仲間を鼓舞し続けた背番号18は「同じような失敗を繰り返さないように」と言った。うつむかず、胸を張って答えた。【金子真仁】