試合前練習から「世界の村神様」は姿をほとんど見せなかった。村上は練習冒頭のアップには顔を出したが、打撃練習などは回避。史上初の代表戦5試合連続本塁打の記録がかかった今シリーズ最終戦は、初めてスタメンから外れた。ここまで十分すぎる結果を残し、来春の“侍4番当確”ランプがついた背番号55は、試合中はベンチに座らず、壁に背中を預けながら戦況を見守った。

村神様がいない侍打線だったが、世界一奪回への貴重なテストケースにもなった。代役の4番には、栗山監督の野球をよく知る近藤を抜てきした。所属チームでは4番を張る牧は5番、岡本和は7番で9日と同じ打順で起用。上位打線も足を使える塩見、近本、山田と並べたのも、今シリーズを通して変わらず。本番を見据えて勝つための打順の大枠を固めながら、有事にも備えた試金石とした。

栗山監督の采配も、序盤から積極的だった。1回に1番塩見が内野安打で出塁すると、2番近本にはエンドランのサイン(結果は中飛)を出した。2回に塩見の2点適時打で先制すると、3回には四球で出塁した3番山田に代走周東を起用。周東はすぐに二盗を決めて、3点目を奪う起点となった。采配を振る栗山監督にとっても貴重な実戦の場。確認しておきたいことを序盤から次々と試した。

栗山監督は9日の試合後に「村上選手を含めて、日本の中心バッターに来てもらっている。それは本当に頼もしい。点を取ってくれそうな雰囲気がある。すごいなぁと思います」と、侍戦士たちをたたえた。代役4番近藤も4回に適時打を放ち、牧や岡本和の一塁起用など侍ジャパンならではのマネジメントにも一定の収穫があった。すべては、4番に村上がどっしりと座ってくれたことが大きい。来春へ向けて攻撃陣の輪郭ができた、強化試合4試合となった。【木下大輔】