日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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日本ハムの新球場「エスコンフィールド」は大掛かりな改修工事が行われるはずだった。それが覆った。その代わり「カネ払え!」と。なんだか釈然としない“お沙汰”が下ったのだ。

昨年11月7日の実行委員会で、一部球団から「ファウルゾーンが公認野球規則の規定に違反している」という内容の指摘が上がった。日本ハムは23、24年オフを工期とし、いきなり新球場の大規模改修を強いられた。

公認野球規則(2・01)「競技場の設定」には、本塁からバックネットまでの距離は60フィート(18・288メートル)以上が必要と規定されている。しかし、「エスコンフィールド」は基準を満たさず、50フィート(15・24メートル)しかなかった。

アグリーメントは球場の規格に関して「事前報告」を義務付けているわけではない。メジャーリーグの規則を翻訳している公認野球規則にある文言の解釈に相違があったことも分かったている。意図的に仕組んだルール違反でないのも確かなようだ。

昨年10月、当時コミッショナーの斎藤惇はこれを「欠陥球場」と言い放つなど冷徹だったという。この違反がずっと見つからなかったのはどこに問題があるのだろうか。これはもうセ・パ両リーグの全フランチャイズ球場を再点検するしかない。

そう思っていたら3月7日、NPB(日本野球機構)が「コミッショナー提案」とし、それまでの方向性を転換させた。日本ハムに「野球振興協力金」を支払わせることで、球場の永続的使用を認めるとの説明が行われたのだ。

だれもが“ペナルティー”と受け止めたはずだ。NPBは「誠意ある金額の提示をお願いする」と野球振興協力金を強調。だがその提示額が3億円超というから驚きだった。いかなる規定、算出法ではじき出された数字なのだろうか。

今までほとんどの大リーグ球場を取材してきた。野球の本場では、より臨場感をもたせる変形させた球場も少なくない。NPBも「バックストップがもっと短い球場が散見されるのは事実」と認めている。

しかも、今後は「昨今の流れを踏まえた上で言葉を変える流れになると思っている」と公認野球規則の改訂が前向きに検討されるともいう。

一石を投じた形になった日本ハムは、ルール改訂を前に“罰金”ともいうべき、破格の寄付金を支払うことになった。なんだか不可解ですっきりしない。

ファンのために-。一連の問題からは、その理念が抜け落ちているような気がしてならない。(敬称略)