日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

     ◇     ◇     ◇

東京ドーム入りする前に、上野にある老舗トンカツ店「I」に立ち寄った。花柳界の面影を残し、かつて森繁久弥が主役の映画「とんかつ一代」のロケ現場になったカツサンド発祥の名店で知られる。

今季初の巨人-阪神戦の取材だから、ここは「盛り合わせ定食」(一口カツ、海老フライ、海老コロッケ、ほたて)を奮発する。身内で経営者のおかみに激励されて店を出た。

コアなファンに阪神岡田、巨人原が指揮をとる“伝統の一戦”はたまらなかった。カード勝ち越しを決めた阪神だが、完全投球を続ける村上を交代させるなど見応えのある3連戦だった。

G倒の“燃え尽き症候群”と揶揄(やゆ)されたこともあった。初の関東遠征の6連戦で巨人に続くDeNとのカード初戦は完敗。2戦目が雨天中止。切り替えができる“恵みの雨”ととらえたい。

開幕から乗り遅れた佐藤輝について論じたのは中西太だ。「弱点を覚えられておるなぁ…」。裏返せば“そこ”を克服できていないとの現状分析だろう。

西鉄ライオンズで本塁打王5回、打点王3回、首位打者2回に輝いた。名三塁手で、指導者としても、あまたの大打者を育て上げた名伯楽。その実績は“教え魔”といわれた山内一弘と双璧とも評されている。

個人的には、打撃を指南する上で、山内が選手に「スイング」をさせながら教えるのに対し、中西は「ティー」で打者を作り上げていくタイプの指導者だと勝手に解釈している。

西鉄、阪神、日本ハムで監督を歴任し、計8球団を渡り歩いた。ヤクルト、ソフトバンクなどにも浸透した“中西式”のティーは独特で、自ら打撃投手を務めながら「打たせる」ことに重点を置いた。

「大山のほうはまだ元気だが、佐藤は崩れとるな。もっと広角に打ってたはずだろ。死に物狂いで、打って、打って、打ち込むことだな。もっと(ボールを)引きつけて、来た球に逆らわず、シャープにとらえる。そのためにも足元をしっかり固めることだ」

“ふとっさん”の指導法は、名監督・三原脩から“人を見て法を説け”と教え込まれたことが原点になっている。おのおのの個性を生かし、それぞれに技術を授けてきた。

佐藤輝を語り続けたコメントのすべてを活字にするには行数が足りないが、言葉の端々にヒントがちりばめられている気がした。

「うまくタイミングがとれないのかな」と指摘するのは、フォームを含めた打ち方の問題だろう。「まだ若いんだから大丈夫。自信をもてと。佐藤にそう伝えてくれ」。“怪童”のゲキが届くか…。(敬称略)

【関連記事】阪神ニュース一覧