日刊スポーツの不定期企画「虎を深掘り。」の第3回は、12日の巨人戦(東京ドーム)で7回完全投球と驚きの投球を披露した村上頌樹投手(24)の「真っスラ」を徹底検証した。

本人をはじめ、安藤優也投手コーチ(45)、リードした坂本誠志郎捕手(29)、智弁学園の恩師・小坂将尚監督(45)の証言をもとに、“魔球”をひもといた。【取材・構成=阪神取材班】

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プロ未勝利の村上がみせた「7回完全」の投球の裏には“魔球”の存在があった。打者の手元で鋭く曲がる「真っスラ」だ。全84球のうち半分近くを占めた独特の“直球”を調査すると、巨人打線をきりきり舞いにさせた要因が浮かび上がってきた。

◆証言<1>「小学生時代から」

村上の「真っスラ」は天性のものだった。地元淡路島の賀集少年野球クラブに所属していた小学生時代から「たまに曲がってたんですよ」と明かした。少年野球では関節の障害防止のため変化球を投げることが禁じられているが「汗で手がぬれた時に曲がって、バッターから『変化球やん!』って言われて…」と苦笑いで当時を振り返った。

意識としては「普通の真っすぐをただ投げているだけ」という。「自分の中では曲げようとかではなくて、才木とか湯浅をイメージして投げてます」。巨人戦では凡打の山を築き、「真っスラはバッターが嫌がっている感じはした」と手応えを感じ取っていた。

◆証言<2>「吹き上がる」

「7回完全」をリードした坂本は“魔球”について「ちょっと(左上に)吹き上がる」と表現した。21アウト中7つがフライアウトで「(通常の)真っスラはボールの上っ面をたたいてゴロになる。村上のは吹き上がってるからフライアウトになる」。トラックマンなどのデータではホップ成分も確認されている。「分かっていても何かつかまらない。ちょっと重力に反して(小刻みに)フーッと動く時がある。独特で不思議なボールです」と明かした。

阪神では真っスラを武器に17年に最優秀中継ぎ賞を獲得したOB桑原謙太朗氏が有名だが、村上とは変化のタイプが違うという。坂本は「桑原さんの真っスラは回転が強くて、『グシャグシャ』っていう感じ」と説明した。さらに坂本は「ちょっと(左足が)インステップして投げる分、バッターからしたらさらに真っスラしているように感じるんじゃないかなと思います」と分析した。

◆証言<3>「球速上がって球威も向上」

球速アップも「真っスラ」を生かす上で重要なポイントになった。3月25日のオリックスとのオープン戦(京セラドーム大阪)では自己最速を更新する150キロを計測。昨季まで2軍コーチを務めていた安藤投手コーチから「まずは球速を上げていこう」と目標を定められ、トレーニングや投げ込みで力をつけた。「巨人戦の真っスラは去年と全然違うと思う。球速を上げられたことが大きく関係していて、より上にフワッと大きく変化してるから打者はフライしか打てない」。

実際に平均球速も4キロ近く上がったという。1月は青柳に弟子入りして合同自主トレを実施。エースから「左足をついてから投げる」ことの重要性を学んだ村上は「フォームの力を入れるタイミングがハマってきている」と手応え十分だ。高校時代の恩師、智弁学園の小坂監督も「真っすぐが本当に強くなった」と目を細め、「高校、大学の時は横の変化をしていたけど、真っすぐが強くなったから違う変化が生まれたと思う」と話した。

天性と努力によって進化した“魔球”を武器に、4年目の今季ブレークを期す。

◆阪神村上の持ち球 直球(真っスラ)、スライダー、カットボール、ツーシーム、カーブ、フォーク

○…村上は先発予定の22日の中日戦(バンテリンドーム)へ向け、甲子園で調整した。投手指名練習に参加し、キャッチボールを行い、ダッシュで汗を流した。12日の巨人戦で「7回完全」投球をみせた翌13日には「7回しっかり投げ切れたのは自信になりますし、これからも継続して長いイニングを投げられるようにしたい」と話していた。先発ローテーション定着へ、快投を連発する。