耐えた! 阪神が選手会長の復活美技に導かれ、首位を死守した。1点リードの7回1死二塁、右肋骨(ろっこつ)骨折から復帰2戦目の近本光司外野手(28)が右中間最深部への大飛球をジャンピングキャッチし、チームを救った。打線は8回に佐藤輝明内野手(24)の適時二塁打などでリードを拡大。6回1失点の先発伊藤将司投手(27)にセ・リーグ本拠地制覇となる今季4勝目をプレゼントした。引き分け以下で2位転落だった一戦で連敗を阻止。虎は粘り続ける。

神宮の夜空に舞った白球が、風でセンター守備範囲に近づいてきた。近本は必死に走った。心の中では「やべー」とさえ思った。最後は右中間最深部でジャンピングキャッチ。1点リードの7回1死二塁、長岡の大飛球をつかんだ。

「『ライトや、ライトフライや』と思ったけど、こっちに来てたんで。ジャンプしたら入ったっす」

右翼森下の横で帽子を触る。三塁側ベンチで喜ぶ仲間にはクールに左手を上げる。ヤクルトファンは悲鳴を、阪神ファンは歓声をあげていた。

クールに見せたが余裕はなかった。2日の巨人戦で高梨から死球を受け、右肋骨を骨折。死球の直後、左中間フェンスに激突する好捕も見せていたが、これが負傷箇所に追い打ちをかけた可能性は低くない。

この日の美技でも「よぎることはよぎりました」というが「よぎる前には捕ってます。捕ってからよぎった」と全力だった。フェンスに激突しないよう両手をクッションにして悪夢は繰り返さない。抜けていれば同点の危機を救った。

リハビリ期間中「無理と思ったら無理。無理と思わんかったら、できるやろ」と周囲に言った。

「肋骨(ろっこつ)なんて折れててもできる部位やから。別に肋骨ぐらいだったら固定する必要もない。手首とか足とかなら固定せなあかんから動けないっていうのは分かるけど、できるやん」

だからすぐにバットを持った。鳴尾浜の室内で、患部を確認しながら振り込む日々。不屈の精神で戦闘態勢に戻した。

ヘッドスライディングでの帰塁練習を行わず、ぶっつけで前日22日に1軍復帰。5回に四球で出塁すると、リーグ単独トップの13個目となる二盗に成功。「足はめちゃくちゃ動いてたんで」とスライディングもバッチリだった。3回の死球はユニホームをかすめただけで、問題なしだ。

岡田監督も「やっぱり失点を防ぐというかな。こういうゲーム展開やからな、大きいよな」とビッグプレーをたたえた。チームは後半戦初勝利で、負ければ首位陥落のピンチを耐えた。「今日勝ったのは、めちゃくちゃ良かったですね」。背番号5が久々の勝利を味わい、神宮の大歓声を浴びた。【中野椋】

【動画】阪神近本光司が神技見せる!あわやフェン直の大飛球好捕→両手クッションに安全着地