1勝目を手にした西武与座海人投手(27)の言葉はやはり、殊勝だった。
「素直に喜びたいと思いますけど、後に投げてくれた中継ぎの方々に本当に感謝しています」
8試合に先発し、好投しても1度も白星がつかなかった。6回途中で降板し「内容自体はあまり良くなかった」という夜に白星が付くのも、巡り合わせだ。
春先は振るわなかった。制球が安定せず、1軍でも2軍でも甘いところを本塁打にされた。
豊田清1軍投手コーチ(52)も首をかしげた。
「投球練習も含めて『あれっ、与座ってこんなにコントロール悪かったっけ?』くらいの感じで。コントロールも悪いし、テンポ、間合い、時差投球もできていなくて」
再度の2軍調整で時差投球も含めて磨き直し、ようやく“10勝投手の与座”が躍動するようになった。この日も泳がせ、深い外野フライで止めた。
勝ち投手とは縁遠かったが、与座はさほど気にしていなかった。
「まぁ、白星がついて来ればうれしいですけどね。今はしっかり仕事する、ってところに重点置いてやれているので」
仕事する-。
「どれだけ自分の投球ができたか、チームの勝ちにつなげられたかというところにフォーカスしてきたので。試合も作れている感触もありましたし、悩むことはなかったです」
勝利投手の権利は「ご褒美みたいなもの」と言っていた。そんな欲深くない若者に「1」がついたのは、チームにとっては間違いなくいいことだ。
2位ロッテに連勝した。どん底を味わい、借金はまだ10もある。でもチームは今、間違いなく上向きにある。さらなる浮上へ、サブマリン右腕の躍動は欠かせない。
「勝ちが付いたら、1つ自分で苦しいところでつかみとってもらえれば、もっと与座らしさが出てくるんじゃないかと思います」
豊田コーチの“いい予感”の前提条件がついにクリアされた。【金子真仁】



