浅野記念日だ。巨人のドラフト1位浅野翔吾外野手(18)がプロ1号2ランを放った。広島戦に「7番右翼」でスタメン出場。3点を追う5回に広島森の内角カットボールを左翼席後方の防球ネットに突き刺す特大アーチを決め、逆転勝利を呼び込んだ。昨年の8月18日は高松商(香川)の主将として甲子園に出場。準々決勝の近江(滋賀)戦でバックスクリーンに1発を放っていた。あれから1年-。プロ入りした“おっさんルーキー”が、メモリアル本塁打を刻んだ。
◇ ◇ ◇
高松駅から車で約15分。中華料理屋「えびす屋」の店主・吉田誠さん(67)が握る中華鍋には、浅野の恩返しの気持ちが詰まる。
付き合いは10年以上。野球を始めた屋島スポーツ少年団の打ち上げや誕生会の場。卒団後も通う。「からあげ定食」が大好物。7個のからあげを12個に増量しカレー粉パウダーを振りかける。白飯はどんぶり2杯、ラーメンも追加。締めにチャーハン。5席あるカウンターに座り、野球だけでなく恋愛話もする店だ。
中学、高校と1人で訪れると、吉田さんのポケットマネーでツケにしてもらった。「親には内緒やで」とくぎを刺されたが、その約束はいつも守れず。家族がお代を払おうとしても「出世したら返してね」との“断り文句”を続けられた。
2月。プロ入りした浅野は「何かお店のためにしたいです」と申し出た。吉田さんからは「何もいらん。レギュラーになってくれるのが一番うれしい」と、また断られた。何とか折れてもらい、リクエストされたのが新たな中華鍋だった。11日DeNA戦の初安打後も電話で報告。恩返しを続ける。【上田悠太】