岡田阪神が2位広島との直接対決第1ラウンドを制して9月負けなしの6連勝、優勝マジックを10に減らした。
先発の村上頌樹投手(25)が、8回途中1失点の快投で初の10勝をマーク。プロ2年間0勝だった右腕がシンデレラストーリーを完成させるチームトップの2桁勝利を挙げた。9日も勝てば優勝マジックは一気に3減って7になる。最短14日のアレ実現へ、カウントダウンが一気に加速だ。
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村上は甲子園のマウンドを楽しんでいた。7回、堂林を併殺打に仕留めると破顔した。「今日は飛ばしすぎてたんで。気合、入りすぎてました」。初回からフルスロットルで低めを突いた。
自身3連勝でチームトップ10勝目。新人や助っ人を除き、通算0勝投手の2桁勝利は、球団では08年の岩田稔以来、15年ぶりだ。今季初先発だった4月巨人戦で「7回完全」投球を決めて始まったシンデレラストーリーが、節目に到達。新人王の大本命どころか、1・76の防御率も1位をキープしてタイトルも視界に入れ、リーグ優勝ならMVPの可能性も出てきた。
神懸かった「村上様」の片りんは、オフから垣間見えていた。
「村上、日本代表いけるんちゃうか!?」
冗談交じりの声が飛んだのは昨年12月末のこと。故郷の兵庫・淡路島で近本、ヤクルト武岡との合同自主トレの合間、フィンランド発のスポーツ「モルック」に熱中した。12本の木のピンを立て、3~4メートル離れた場所から木製のスティックを順番に投げ、倒した本数などで得た得点を50点にする早さを競うものだ。
村上はモルックのセンスにあふれていた。ボウリングのように下手投げで投じると、ことごとく狙った場所へ。「日本代表」のワードが飛ぶのも、間違いではない精密機械ぶりだった。
「モルック、めっちゃ楽しいっす。楽しむってことは野球にもつながってるんじゃないかな」
2位広島との直接対決初戦で7回1/3を無四球、1失点。本業でも抜群の制球力で制圧した。3連戦を前に「楽しめ」と送り出した岡田監督は「普通に投げとったなあ(笑い)」と容易に重圧をはねのけた右腕に拍子抜け。「誰も思てないやんか、この時期に村上がこんなピッチングするとは」。今や先発ローテの柱になった男に、最大級の賛辞を送った。
今季5度目の6連勝で貯金は最多の31。2位広島に今季最大9ゲーム差をつけ、優勝マジックを10にした。「減っても2つずつやからな。おーん。まあ、もうちょっと楽しめるやんか(笑い)。ゆっくりと」と指揮官。18年ぶりのアレへ、いよいよカウントダウンが1桁台に突入する。【中野椋】
▼阪神村上が10勝目。3年目で初の2桁勝利を挙げた。1年目は0勝1敗、2年目は1軍登板なし。新人や外国人投手を除き、前年まで未勝利の投手が2桁勝利を記録したのは19年高橋礼(ソフトバンク=12勝)以来。阪神では2リーグ制後、53年渡辺省三(2年目=10勝)、57年石川良照(3年目=13勝)、60年本間勝(3年目=13勝)、08年岩田稔(3年目=10勝)に次いで15年ぶり5人目。