最後まで直球を信じた。阪神才木浩人投手(24)が中日打線を10回無失点と圧倒した。0-0の延長10回2死一、二塁。一打サヨナラの場面で、代打村松を迎えた。右肘のトミー・ジョン手術から復帰後、最多となる130球目。カウント1-1から148キロ直球を選んだ。「(直球は)最後まで球数いっても、イニングいっても、それなりに押せていた。いい感じに投げられた」。打ち上がった三飛を佐藤輝がつかむと、固く拳を握った。10回5安打無失点。7三振を奪い、プロ初のシーズン100奪三振も達成した。
9回を投げ終えた時点で球数は116球に到達。ベンチに戻ると首脳陣に聞かれた。「『もう代わる?』と言われたんですけど。お願いして、わがまま言って投げさせてもらった」。志願の1イニングもきっちりゼロ封。「期待に応えられるピッチングはできたかなと思う」。阪神先発投手では、青柳の22年5月6日の中日戦(バンテリンドーム)以来となる延長投球となった。
自身初の2桁勝利に王手をかける登板だった。当初22日ヤクルト戦で登板予定だったが、雨天中止で2日スライド。この試合で9勝目を挙げれば、中6日で10勝をかけた10月1日広島戦に臨むことが可能だった。1点が遠く逃した白星。それでも「ああ、ドンマイっす」と笑い飛ばした。
さらに「(白星は)運なんで、本当に。そこよりも試合を作ってゼロで抑えられているのは良かった。勝ち星はオマケみたいなものなので」と曇りなく言い切った。
今季は4度の出場選手登録抹消を経ながら、6日に1軍再登録された。以降は3戦2勝、防御率は0・36。リーグ優勝を決めた14日巨人戦(甲子園)では、7回1失点で勝利投手となった。「イニングを投げて抑えられているのは、CSに向けていい感じで入れると思う。継続していけたら」。快投を演じた右腕は、明るい表情で前を向いた。【波部俊之介】