これぞエースの投球だ! オリックスが山本由伸投手(25)の快投で、3勝3敗のタイに持ち込み、2年連続日本一へ逆王手をかけた。第1戦で6回途中7失点で降板したが、きっちりと修正。今季最多138球で日本シリーズ新記録となる14奪三振で1失点完投。今オフにポスティングシステムを使ってのメジャー挑戦が有力視されており、日本での「ラスト登板」で日本シリーズ初勝利を挙げた。

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最後まで守り抜く。これが正真正銘の山本だ。「やっと終わったと。最後出し切っていたので、すごく良かったです」。メジャー挑戦が有力視されるエースにとって“ラストマウンド”。138球に気持ちを込めると、託してくれた指揮官と固く手を握った。

「みんな心配しているのかなと思ってマウンドに上がりました」。お立ち台では周囲の思いを見透かしたように、さわやかに笑った。2回にノイジーに先制ソロを献上したが、すぐに堂々とした姿に。さらに連打を浴び1死一、三塁のピンチを招いたが、木浪、近本の巧打者に2三振。7回終了後、ベンチ裏で球数を数えていると「制限ないよ」と声がかかった。声の主は中嶋監督。そんな冗談も聞きながら、日本シリーズ新記録の14奪三振。5度目の先発での初勝利だった。

10月28日の第1戦(京セラドーム大阪)に先発したが、自己ワーストタイ7失点を喫し敗戦。「6戦目まではもう1回まわってくるだろうなと思ったんで、とにかく集中した」。仲間を信じ、次の1戦だけに思いをかけた。

シーズン開幕直前、侍ジャパンの一員として頂点に輝いた。学んだのは一流の技術だけではない。「WBCでは毎試合、大事になる試合を戦えた。1試合に対してしっかり入りこむという部分はすごく勉強になりました」。全てが負けられない1試合。オリックスのユニホームに戻っても、思いはより強くなった。

世界一に輝いた夜。「来る?」。ダルビッシュが自分の部屋へと、山本ら投手陣を誘ってくれた。「印象に残ったシーンはどこ?」。熱い時間をともにした誰もが話は尽きない。ジュースを片手に朝方まで語り合い、濃密な日々を振り返った時間。再びそれぞれの戦いに向かうスタートラインになった。

熱投がつないだ逆王手。2年連続の日本一へ勢いはついた。「明日はなんとかみんなで勝っていい締めくくりにしたいです」。第7戦はベンチ入りメンバーから外れる方向。それでもともに戦う気持ちは変わらない。「明日しっかり決めて中嶋監督を日本一の監督にしましょう!」。エースの大号令だ。【磯綾乃】

◆山本由伸(やまもと・よしのぶ)1998年(平10)8月17日、岡山県生まれ。都城では甲子園出場なし。16年ドラフト4位でオリックス入団。22年6月18日西武戦、今年9月9日ロッテ戦でノーヒットノーラン。21~23年に史上初めて3年連続4冠(勝利、勝率、奪三振、防御率)を達成し、3年連続沢村賞。21、22年最優秀選手。19年プレミア12、21年東京五輪、23年WBCで優勝。今季推定年俸6億5000万円。178センチ、80キロ。右投げ右打ち。

◆ポスティングシステム 海外FA権取得前に大リーグへ移籍できる制度。申請期間は今月1日に始まり、12月15日まで。申請手続き後、交渉期間が45日間ある。日本球団への譲渡金は、選手の契約で保証される額によって変動する。

【日本シリーズ】オリックス連覇へ逆王手! 山本由伸が1失点完投、14奪三振/ライブ詳細