18年ぶりのリーグ制覇、そして38年ぶりの日本一に導いた阪神岡田彰布監督(65)の野球とは-。選手目線から見た「岡田野球」の裏側に「潜入」した。そこには選手の自信を存分に引き出し、試合に臨ませるという“岡田マジック”が隠されていた。【取材・構成=阪神取材班】

   ◇   ◇   ◇

猛虎復活へと導いた「岡田野球」について、実際にグラウンドでプレーしていた選手たちはどう感じていたのか。虎ナインに取材を重ねたところ、その実態が浮かび上がってきた。

◆さりげないフォローでモチベーションアップ

岡田監督が選手と直接会話することが少ないことは有名だが、意外にも直接選手に声をかけ、個々の士気を高めていた。岩崎は打たれた翌日などに「何も気にすることはないよ」と伝えられることが何度かあったという。伊藤将は本調子ではないと感じていた試合中に「どんどん投げてたらよくなっていくやろ」とのフォローに加え「(もっと)低く」と助言も送られた。7月11日のDeNA戦で2カ月ぶりに1軍戦の先発に向かう青柳には「気楽にいけ」と背中を押していた。

小野寺は「僕が武器としていることを『得意』と思ってくださっていて、うれしかったです」。9月15日の敵地広島戦、1点を追う9回1死一、三塁から大山が二盗を試みるもアウトになり、小野寺が空振り三振に倒れた。その後、指揮官から「(大山を)走らせんかったら得意の一、二塁間打てたな」と言われたという。今季ブレークした大竹は「選手の特徴や性格を分かっている。よくないところを見るよりも、いいところを見て評価してくださったと思う」と想像した。

◆研ぎ澄まされた野球勘

岡田監督が振りかざすタクトに、選手も全幅の信頼を寄せる。中野は「試合の流れを読んでの采配は本当に的中する。勝負眼がすごい。走者を進塁させないための外野からの返球のカットを徹底するところとか、本当に細かい野球だと思う」。熊谷は「すべてにおいて本当に明確。『あわよくば…』はないですね」。村上は「これ以上いったら危ないなと思っている時に、『最後ボール浮いてきとったから代えたわ』って判断してくださいました」。

◆言葉なくとも起用法で思いが伝わる

岩貞は「選手が『自分はこの役割だ』と思って、監督もちゃんとその場所で使ってくれるので、準備がしっかりできる。言葉はないんですけど、起用法の気持ちが伝わる。そこは意気に感じています」。才木は「『最近勝ってないしな』って先発に勝ちがつくまで投げさせてくれたりだとかは意外でした。こっちの意見を尊重してくれるのはありがたいです」と感謝する。

◆理想の監督像

梅野は「ポイント、ポイントでチームをグッと締めるし、選手1人1人を見て厳しいこともストレートに言ってくださる。監督らしい監督です」。加治屋は「自分の野球を広げてくれました。自分がやるべきことが明確で、みんなが野球にのめり込んでいた。『選手の給料を上げてあげるのも監督の仕事』と話されている記事を見て感銘を受けました」。ミエセスは「いい監督としか言いようがない。打撃も聞いたらちゃんと教えてくれますし、愛のあるいじりもしてくれる。(8月18日の)DeNA戦の猛抗議もチームのために動いている姿をみて、本当にかっこいいなと思った瞬間でした」と目を輝かせた。

「岡田野球」がチーム全体に浸透し、全員が自信を持って試合に臨めていたことが、リーグ優勝、日本一へとつながっていた。